話がだいぶ脱線してしまった。少しはIT関連のことも書かないといけない。
前回の2008年の選挙では、フェイスブック立ち上げメンバーの一人がオバマの選対に加わってソーシャルメディア関連の取り組みを指揮したことが話題になった。
それに比べると、今回の選挙ではTwitterやFacebookなどの目新しさが薄れた分、「特定のツールやサービスを使ってどうこう」といった類の話は目立たなくなった気がする。オバマ大統領が当確後の第一声をTwitterで出していたことを考えると、もはや「あって当たり前のもの」になっているのだろう。
今回の選挙に向けて、オバマ陣営では前回の反省点だったある弱点の解決から準備を開始したという。
その弱点とは、分散していた支持者・投票者のリストだ。
リストを管理するそれぞれの者が、自分たちの影響力の拠り所としてリストを抱え込んでしまい、他人とは情報共有したがらないような状況にあったのだ。
そこでオバマ選対の責任者は、この分散したデータの統合から作業を開始した。結果的にこの作業には18カ月もの時間がかかったとTIMEには書かれている。また、対象とされたデータも多岐にわたり、出口調査の結果、資金提供者のリスト、ボランティアとして各家庭をまわった運動員のリスト、さらには激戦区に居住する民主党支持者のソーシャルメディア上での友だちの情報なども、この統合データベースに組み込まれたという。
統合作業の完了後、選対担当者が取り組んだのは、さまざまな分野でのテストだ。「どんな電子メールのメッセージに、だれが反応する率が高かったか」「電話での支持呼びかけは、地元のボランティアからするのがいいか、それとも離れた場所で暮らす民主党支持者からするほうが効果的か」「フェイスブックのアプリをつかって、ユーザーが友だちに投票のための有権者登録を促すと、どれくらいの反応が得られるか」など、無数のテストが繰り返されたようだ。
なお、「だれが選挙資金集めの呼びかけメールを出すと効果的か」という取り組みでは、ミシェル夫人のメールがもっとも反応がよく、一方フェイスブックのアプリをつかった取り組みでは、ほぼ5人に1人が友人からのリクエストに応じて有権者登録をしていたという。
さらに、良くも悪しくも効果が高いとされるテレビCMの放映についても、やはりデータ解析の結果を活かしたCM枠の買い付けが行われた。たとえば「フロリダ州マイアミ・デード郡で暮らす35歳以下の女性をターゲットにした場合、最も効果的な番組は……」といった具合で、その結果、従来ではほぼ考えられなかったドラマ(『The Walking Dead』といった番組名も出ている)の時間帯に選挙のCMが流れることになったという。そして、テレビCMに関する費用対効果は、前回選挙に比べて14%も上がったという関係者の話がこの記事には出ている。
New York Timesの記者であるチャールズ・ドゥヒッグが今年初めに出した著書のなかには、「高度なデータマイニングの手法を使って、女性の買い物客が購入した商品の組み合わせから、その人が妊娠しているかどうかを判別し、関連商品を掲載したカタログを送付する」という米ターゲットのエピソードが出ていた。
分析内容の難易度や結果の精度の違いなど、詳しいところは判断しかねるが、今回の大統領選挙でも、あるいはそれと比肩するレベルのデータ解析、そしてその結果に基づいた戦略・戦術の考案と実行が行われていたのかもしれない。
このTIME誌の記事を読みながら、ふとそんな考えも頭のなかをよぎった次第である。
(敬称略)
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