2度目の海外挑戦へ
kintoneは国境も越えている。同社にとって2度目の海外挑戦の武器となっているのだ。サイボウズは、もともと松下電工に勤めていた若手ITエンジニアたちが起業したベンチャー、青野氏も創業メンバーの一人だ。
これまでの製品は日本企業の文化に根差したグループウェアであり、かつて海外に進出したものの、いったんは撤退している。それは文化の違いなど、さまざまな障害を感じたからだと青野氏は言う。
「米国からの撤退を決断をしたのは僕です。何一つ勝てる要素がないと考えたのです。2005年ごろからは、人材の採用から考えを改めて、ようやく再進出に漕ぎ着けました」
ここ数年では、新入社員として、東京大学や京都大学の出身者などの優秀な人材を重点的に採用してきているという。特に、コンピュータサイエンス分野を得意とする人材は、クラウドサービスを立ち上げる上で不可欠だったとのことだ。
「人間は失敗するもの」との前提に立ったルール作りを進める
「cybozu.comでやりたかったのはインフラです。この人材で実現したと言っていいでしょう。ファシリティは借りているが自前で運用しています。システムは4重化し、BCP(事業継続計画)も考慮してレプリケーションもバックアップも両方備えました。ここまでやっているのはなかなかないですし、これで1ユーザー500円からというのは破格といえるでしょう」(青野氏)
ヒューマンエラーを避けるため、社内でも原則として手順書に沿って運用され、手順にない作業はダブルチェックしながら進めるルールとなっている。
「『人間は失敗するもの』という前提に立ったルールです。こういったルール作りも、近年採用した人材のおかげです」(青野氏)
6月にはkintoneの米国向けサイトをオープンし、ユニークな事例も掲載している。また米国だけでなくアジア諸国にも展開が進んでいる。中国でも日系企業が中心ではあるが数十社ほどのユーザーがあり、ほかの国でも少しずつ導入例が出てきているという。こうした展開が可能になってくるのは、ミドルウェアのようなシステムを提供するkintoneの性質にある。
「サイボウズOfficeなどグループウェアは日本企業の文化に合わせた機能が充実していますが、kintoneはそれとは違い、文化に依存しにくい層でアプローチしているので、海外でも受け入れられやすいのでしょう。数値目標などは特にありませんが、各国の国内総生産(GDP)比くらいの売り上げ比率にしたいと考えています。われわれがやりたいのは、自分たちが作ったグループウェアが、例えばアルゼンチンに旅行したときにも使われているのを見る、というようなことなのです」(青野氏)