著者のArthurは、結論の部分で「市場シェアの数字は眉にツバして読もう」などと書いている。少なくとも、四半期ごとの(OS別やメーカー別の)販売台数シェアくらいでは、全体像のごく一部しかわからない、ということだろう(それ以前に、「本当にエンドユーザーの手に製品が渡ったかどうかもわからない『出荷台数』なんかを今さら使うな」といった声も聞こえてきそうだが)。
またArthurは「ハードデータを探そう。そして、国単位といった大きな市場におけるテクノロジ(製品・サービス)の普及は、かなりゆっくりとしたスピードで進むことが多い――わずか数カ月で状況が大きく変わったりしない、その点は間違いないことも覚えておこう」とも記している。
前から、たとえばiPhoneに関して「グローバル(もしくは特定の国)での販売市場シェアが10%台まで下がってきている(……だから、Appleはもっと安い製品、あるいは大きなディスプレイを積んだ製品を出して巻き返しを図ろうとしている)」といった文脈の記事を各所で目にして、物足りない感じを抱くことがよくあった(註2)。「1台600ドル以上もする製品と100ドル以下のそれとを一緒くたにカウントして、そもそも何の意味があるんだ」とか「間違いではないにせよ、それだけだと何も見えてこないのではないか」といった具合である。
ただ、そうしたことに気付いていながらも、いざそれ以上に踏み込んだものをアウトプットしようとなると、これがなかなか大変……。1日単位で動かなければならないことも多い同業者の端くれとして、そういう実感もあった。多分ほかの人には「一手間余計にかけた」くらいにしか見えないかもしれない、このGuardian記事が自分には妙に強く印象に残ったのはそのためで、ちょっと紹介してみたいと思った次第である。
このCharles Arthurなる人物がまとめた記事の中には、ほかに「GoogleはどうやってオープンソースであるAndroidをコントロールしているのか」(How Google controls Android's open-source software)、「(Androidについて)スマートフォン市場のシェアは80%でも、ユーザー数は全体の半分に過ぎないかもしれない理由」(Why an 80% market share might only represent half of smartphone users)、そしてWindows PCメーカーの売り上げと利益の減少ぶりを採り上げたもの(How the 'value trap' squeezes Windows PC makers' revenues and profits)など興味深い見出しが並んでいる。こうしたものについても今後随時紹介できればと思う。
註1 iOSのシェアがこれほど高いのは今のところ日米それにカナダくらいのものというのは、こういう話を読む際の前提。下掲のブログ記事(2013年11月半ばの日付となっている)にはグローバルと各地域のOS別シェアの推移を示したグラフがあって、その辺りの感じがつかみやすい。
Smartphone Market Share By Country - Q3 2013: Android Dominates --Tech-Thoughts
註2 下掲のAppleに関するWSJ記事(2013年9月初めの、新型iPhone発表直前に公開されていたもの)などが典型だろうが、「第2四半期には世界のスマートフォン市場でiPhoneの出荷(販売)台数が14%前後まで落ち込む一方、Samsungのシェアは……」などとして、だから「Appleは今のものより大きなディスプレイを搭載したiPhoneを出そうとしている」という説明の仕方である。
As a result, despite rising unit sales for each of the top smartphone companies, Apple's share of world-wide sales fell to 14% in the second quarter from 19% the same time a year prior. Over the same period, Samsung's share rose to 32% from 30%, according to market research firm Gartner.
Apple Tests iPhone Screens as Large as Six Inches--WSJ
(文中敬称略)
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