The New York Times(NYTimes)が2014年の年明けに紙面に掲載した『Inside Llewyn Davis』という映画の広告が、米メディア業界関係者の間でちょっとした物議を醸していたようだ。メディアビジネスをとりまく状況が大きくどんどんと変化していて、既存の慣習やルールがそうした変化に追いつかない……そんな現状をよく示している出来事のように思えて興味深かったので、今回はこのエピソードを簡単に紹介する。
[Inside Llewyn Davis - Official Trailer 2 [HD]]この騒動の発端は、年明け4日のNYTimes紙に掲載された『Inside Llewyn Davis』という映画の広告。下記画像にある通りの全面広告で、中央にツイートがぽつんと載っており、あとは最下段に「今年一番の映画」(“The best picture of the year.”)とあるだけの至ってシンプルなもの――「意表を突いた」などといった形容詞も頭に浮かんできそうな、一種の「奇策」といったほうがいいかもしれない。
CBSFilms places full-page Times ad of @aoscott tweet for #InsideLlewynDavis. Is a blurbed tweet a bleat? Or a twerb? pic.twitter.com/fNUm3eGGok
— Ty Burr (@tyburr) January 4, 2014
この広告の出稿者は『Inside Llewyn Davis』を配給するCBS Filmsという映画会社。そして引用されたツイートの発言者は、A.O. ScottというNYTimesで映画批評を担当する看板記者(“chief film critic”という肩書き)。この二者にNYTimesを加えた三者が「この話の登場人物(当事者)」ということになる――Twitter(会社)側は「個々のユーザーのゴタゴタには口出ししない」と静観を決め込んでいたらしい。
この一件が物議を醸した理由を説明するのは思った以上に難しいが、無理矢理話を整理すると、以下の3つが主な争点ということになる。