三国大洋のスクラップブック

スプリントとT-モバイルを合併させるにはLAクリッパーズを買収すべし(前編) - (page 3)

三国大洋

2014-05-05 08:00

 関連分野で活動する企業や組織の政治献金額について、opensecrets.orgで調べてみると、NCTAが1987万ドル、CITAが1154万ドル、そしてComcastが1871万ドル、AT&Tが1593万ドル、Verizon Communicationsが1370万ドル、ソフトバンク/Sprintが365万ドル、Deutsche Telekom/T-Mobileが521万ドルなどとなっている(いずれも2013年)。

 いろんな方面に資金をかなり使うようになったGoogleが1580万ドル(Motorola分も含め)、そしてMicrosoftが1049万ドルだから、それらと比べても、AT&TやVerizon、Comcastのロビー活動費がとても多いことが読み取れる。

 携帯通信市場の利益を二分(2社だけで山分け)するAT&TとVerizonに加え、さらに地上(固定線)を完全掌握しようとしかけているComcastにまで喧嘩を吹っ掛けようというのは、つまりそういうことだ。

 米の通信放送業界に利権といったものがあるとすれば、それに群がる企業幹部や役人(このふたつの立場がしょっちゅう入れ替わることの弊害を揶揄する「回転扉」=“revolving door”という言葉も見掛ける)、そして政治家などを相手に戦う、ということを意味するのだと思う。

 こうした連中の利権を脅かすような話(有線・無線ブロードバンドの価格破壊、その前提となるSprintとT-Mobileの合併)を正面から切り出しても、相手が簡単にOKを出すとは思えない。そこでソフトバンク/Sprintとしては「まずは世論を味方に付けて…」と考えて前述の対抗策に打って出た。だが生憎と、彼らの手元にはある程度のモメンタムを生み出せるだけの材料がまだない。

 前述のCharlie Roseのインタビューもウェブ媒体の反応ぶりから判断すると、あまり話題になっていなかったようだし、Sprintというと「LTE網展開で1社だけ後塵を拝している」とか、あるいはかつての「Nextelの吸収失敗」とかいった、あまり良くないイメージが残っているとの印象が伝わってくる。

 「本物の高速ブロードバンドを!」といってもすぐに示せる材料、あるいは具体的なビジョンがないのだから、話を聞くほうにしても「おおっ」とすぐに盛り上がれるはずもない。すでに一部では名前も売れ、それだけの実績も作りつつあるT-MobileのJohn Legereにしても、「お茶の間にも浸透した名前(household name)」とはまだ言えない。

 ましてや、昨夏にソフトバンクのSprint買収が決まった際に「孫という人物はこんな実績の持ち主で……」といった類いの英語の記事を方々で見かけていたくらいだから、米国のお茶の間で同氏の認知度がいまだにかなり低いとしても不思議はない。そうした人物が「世論に訴えかける」「消費者を味方に付ける」といっても、なかなか簡単にはいかないかもしれない。

 この「知名度の低さ」「馴染みのなさ」をどう手当てするか。後編ではその点を考えてみる。(敬称略)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

マイナンバーカードの利用状況を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]