地味で地道なUI/UX論

自分がユーザーだったら--UX設計に必要な視点 - (page 3)

綾塚祐二

2015-07-15 07:00

ペルソナ、カスタマージャーニー

 比較的大きな粒度のUXデザインの方法としては、ユーザーの属性などを細かく設定した「ペルソナ」、アプリケーションやサービスを使うユーザーの行動を簡単なストーリーに仕立てる「カスタマージャーニー」などがよく取りあげられる。これらも「ユーザーの視点に立つ」の延長にある考え方、方法論であり、適切に構築するのは簡単ではない。

 いろいろと調査したデータからペルソナやストーリーを構築しても、「架空のユーザー」を使うと、どうしても自分(設計・開発側)の都合に沿った、思惑どおりの行動を想定してしまう部分が出がちである。まず「(ユーザーとしての)自分」や「身近な他人」で考えてみることは、ペルソナやカスタマージャーニーをうまく活用できるようになるためにも必要な訓練である。

組み合わせや状況で変わるUX

 さて、冒頭の節で「組み合わせで良くないUXを生じることもあり得る」と書いたが、例えばこんな例がある。

 ルーレットなど電子的なクジを作る場合、結果のアタリ、ハズレそれぞれに応じた演出をするのは順当であろう。ハズレた場合に「残念感」を強調する演出によりユーザーの再度の挑戦を煽るUXを与えることもでき、クジがメインのアミューズメントであれば、(行き過ぎでない範囲で)それが適切たりうる。ユーザーの「楽しみ」も増すかもしれない。


アタリ/ハズレのフィードバック(1)
ルーレット単体であればアタリを出すことが目的なのでハズレの残念感もマッチする。
ようやくアタリが出たときのフィードバックがよい印象として残る可能性も高い。

 これを、何か他のものに付随する、おまけのようなクジに使ったらどうなるだろうか。

 飲み物の自動販売機でクジがついていて当たるともう一本もらえる、というようなものがある。ここに、ハズレた場合の「残念感」を強調する演出を持ち込むと、(当たる確率はたいてい高くないので)「買うたびに“残念感”が強調される」自動販売機になってしまう。

 決してそれを意図して設計したわけではなくとも、あくまでユーザーの目的は「飲み物を買うこと」であるから、効果としては残念なUXを生じてしまう。


アタリ/ハズレのフィードバック(2)
自動販売機に連動する場合、下手に強調してしまうと、確率の高さとも相まって、
「この販売機で買うこと・買ったもの」→「ハズレ」が印象として結びついてしまいかねない

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