佐藤氏によると、病院全体における電子カルテシステムの普及率は2014年度で25%。そのうち富士通のシェアは33%という。もっとも400床以上の大規模病院だと普及率は60%近くなり、同社のシェアも50%超に達するとしている。さらに「今回の新システムはクラウドにも対応していることから、中小規模の病院にも利活用していただける」と期待を膨らませている。
ただ、この分野の事情通によると、中小規模の病院に電子カルテシステムが普及しない最大の理由は「病院経営が厳しい中で投資対効果が不透明だから」――。果たして富士通が今回の新システムで、こうした状況を打開できるか、注目しておきたい。
「新たなヘッドマウントディスプレイの用途をさらに広げて商品価値を高めていきたい」 (ブラザー工業 松本勇美夫 常務執行役員)
ブラザー工業の松本勇美夫 常務執行役員
ブラザー工業が先ごろ、ヘッドマウントディスプレイ「AiRScouter(エアスカウター)」の新製品として、業務モデル「WD-200A」と医療モデル「WD-250A」を7月下旬から順次販売開始すると発表した。松本氏の冒頭の発言は、その発表会見で、新製品の拡販に向けた意気込みを示したものである。
エアスカウターは同社が2012年6月から販売展開している業務向けの単眼ヘッドマウントディスプレイで、工場などでの組み立て作業支援や遠隔作業支援、医療支援などの用途を想定している。画面を見ながら両手で作業ができるだけでなく、画面の表示情報と実視野の情報を僅かな視線移動だけで両方とも見ることができるため、作業効率の向上やミスの防止に貢献できるという。
業務モデル「WD-200A」
今回の新製品は東京大学との共同研究により、画像の見やすさや自然な装着感などを改良。見やすさでは、高品質な液晶パネルを搭載し、独自の光学設計で明るくシャープな720P(1280×720ピクセル)の高解像度を実現。映し出す映像の奥行きを30センチから5メートルまで自在に合わせられる焦点距離調整機能も搭載し、目の疲れを低減している。
自然な装着感では、独自のヘッドバンドによってずれにくくし、眼鏡をかけていても裸眼と同じように装着可能。また、自在に操作できるフレキシブルアームの採用により、作業姿勢に合わせて最適なポジションにディスプレイを固定できるようにしている。
このほか、映像インターフェースには幅広い機器で採用されているHDMIを搭載。対応機器であれば、アプリの開発など大がかりな変更を加えることなく容易に接続可能となっている。
新製品の価格は両モデルともオープンだが、業務モデルでは25万円前後を想定し、販売目標は、今後3年間で国内1万2000台、グローバルで3万台としている。
この数字からすると、同社にとってはそう大きな事業規模にならない気がしたので、松本氏にどのように事業規模を拡大するのか聞いてみた。すると、冒頭の発言に続けて次のような答えが返ってきた。
「用途をさらに広げて商品価値を高めていくために、当社が扱っている各種機器との連携を一層図っていきたい。例えば、工作機械などと連携すれば作業現場での新たな用途を見出してソリューションを広げられるのではないか。今後はそうしたソリューションが事業規模拡大の決め手になると考えている」
いわばヘッドマウントディスプレイをさまざまな機器のフロントエンドで活用するといったイメージか。具体的にどのような製品やサービスが出てくるか、注目しておきたい。