あらゆる意思疎通の中心にあるものにしては、言葉というものが軽視されることが多いのに驚かされる。2、3の文で済むような内容を伝えるのに6段落も費された電子メールや、ユーザーをやたら混乱させるメッセージを表示するシステムがその典型だが、言葉を有効に使うことで意思の疎通は良くも悪くもなるものだ。
言葉を使いこなすのに豊富な語彙は必要ないし、文章を図解したり、動名詞と分離不定詞の違いを説明したりする能力も必要ない。それよりも、いくつかの簡単なことに注意するだけで、言葉を力に変えることができるのだ。
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相手の気持ちになれ
言葉の使い方が下手である最大の要因はおそらく、聞き手の気持ちを考えていないことだろう。全く同じ状況を同僚、上司、そして顧客に説明するとしたら、いかに異なる言葉が選ばれるかを示す格好の例になるだろう。コミュニケーションに対するさらに意味のあるアプローチは、自分のメッセージを聞いたり読んだりした相手にすぐさまどのような行動を始めてほしいか、また自社の顧客サービスチャネルの1つに対して顧客にどう反応してほしいのかを熟考することだ。聞き手が所属する部門や組織も、どのようにコミュニケーションを取るべきかに関わってくる。視覚的情報を好むグループもあれば、くだけたコミュニケーションよりも改まったコミュニケーションを受け入れるグループもあるだろう。
それが電話であれ正式なスピーチであれ、電子メールやマーケティングコミュニケーションであれ、聞き手または読み手の気持ちになって考えることは、メッセージを伝える適切な言葉を間違いなく使うための最良の手段であり、最終的にはそのメッセージに基づいてこちらが望む行動を取ってもらうことにもつながる。もし自分のためだけに言葉を使うなら、聞き手は右から左に聞き流し、読み手はメッセージを読むのをやめるだろう。
簡潔に表現せよ
メッセージを簡潔にする技術というものがある。それは、単語の数だけの話ではない。ユーモアや華やかな言い回しはヘミングウェイの研究者をゾッとさせるかもしれないが、こうした技術は複雑な話題や退屈な話題を受け入れやすくする効果もある。ITリーダーにとって、複雑な技術的話題を簡潔にすることは妙技であり、がり勉テクノロジスト以上の存在として見られたいなら必須のスキルだ。例や類推、視覚情報を効果的に使うことにより、こうした話題を簡単に、分かりやすくすることができる。優れたリーダーは複雑なことを簡潔化し、理解しやすい実行可能な目標にする。これは、ITのような複雑な分野では希少な才覚だ。