カレンシーポートという会社は、実はブロックチェーンを謳っている会社ではありません。私たちがやろうとしているのは、資金や価値ーーあらゆる証券もお金もトークンもスタンプもポイントも移転するシステムを作ること。自分たちが考える最高の金融向けシステムに適切な製品やサービスを考えたとき、現在存在するデータベースなどでは要件が合わず、ブロックチェーンに行き着きました。
杉井靖典(カレンシーポート 代表取締役 CEO
しかし、なかなか未発達な分野なので、まずはもっと使いやすくするためのプラットフォームから作らないといけないと思い立ちました。当社は何かのブロックチェーンにコミットしているわけではありません。ただ使っているブロックチェーンはいろいろあり、主にはEthereumもビットコインもNEMも使わせて頂いています。日本IBMの話しを聞いて、Hyperledgerも面白い特性があるので今後も利用したい思っています。
弊社はブロックチェーンの種類に関係なしにつかえるラッパー、いわゆるミドルウェアを作っています。われわれはできてまだ1年経っていない会社なので、その商品化・サービス化はまだできておらず、企業ごとに個別に対応しています。BtoB領域を担当しておりますが、たまたま早いうちからブロックチェーンに関わっていたので、そのバスワードに乗って金融機関が何かやりたいといったとき参加しています。プレスリリースされている案件でいえば、みずほ銀行やJPX(日本取引所グループ)といった金融機関のブロックチェーンの実証実験など、実務上の実装の一部を担っております。ただ、今後は先に申し上げたようなプラットフォームビジネスにしていきたいと考えております。
ブロックチェーン推進協会(BCCC)と日本ブロックチェーン協会(JBA)の違い
小川氏:杉井さんの自己紹介のなかで、BCCCとJBAの両方に加入しているというお話がありました。外からみているとわかりづらいので、両者のスタンスがどう違うのか、また企業が加入するときにどう理解すればいいのか、簡単でかまいませんのでご説明いただけますか。
杉井氏:まずJBAという社団法人は、政策提言を積極的にやっています。ブロックチェーンは規制産業になっていく可能性があるため政府関係者とのやりとりが多く、組織には実際に規制を受ける可能性のある会社が比較的多く入っています。一部に賛助会員というかたちのユーザーもいますが、正会員はそうした方々です。
一方、私が副理事長をしているBCCCはユーザー企業が多いです。参加しているユーザー企業は、「ブロックチェーンを使って何かサービスをしよう」と考えているところが多いのではないでしょうか。実際の加入をみても「ブロックチェーンを使いたいけど技術はわからない」という方々です。そのため、技術部会とか普及委員会とか、BCCCが主催している教育プログラム「ブロックチェーン大学校」などのカリキュラムを目当てに入ってきているようです。また、最近の加入状況をみるとSIの方々が多いです。
大谷健(日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバー製品マーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャー
簡単にいうならば、BCCCは普及・推進を、JBAは規制緩和などの法的な整備を担っているという印象です。
大谷氏:われわれも両方の組織に入っています。ブロックチェーンというディスラプティブ・テクノロジ(破壊的技術)が普及することによって今までと違う経済効果が生み出されるというのは、経産省がいろいろな予測を出している通りです。今までのITのあり方がガラッと変わって、分散型になるからこそ人と人同士がつながって、中央集権を介さずにモノの価値のやりとりができる。ビットコインを1.0だとすると、そこからさらに違う付帯状況を入れてやっていくことが日本経済にインパクトを与えていく。BCCCもJBAもそれを求めて立ち上がった団体で、そこのところは変わらないはずです。
「より実業化させていく」というBCCCと、「政府提言に重きをおき、しっかり守ってルールを作っていく」というJBA。「それだけではない」と両方の団体は言うでしょうが、まずは共通目的があって似ているところがあったうえでフォーカスエリアが違う、というように理解しています。