尾花氏:そういう意味で、予算の使い道が変わったという話。そして、もともとB2Bでいくと法人営業チームのヘッドカウント、もっというとセールスとマーケティングの担当者の頭数が最も大きな「マーケティング予算」な訳です。「総量どーん」という感じ。これに加えて今のようにお金をきちんと枠として取るようになってきたということでいえば、総量はすごく増えてきている感じはしますね。
かつ、それを営業のヘッドカウント的な考え方を持っている人がマーケティングのことを考えると、花火のようなことは好きではないので、それでは1年間こういうことをやるためにこれだけの枠を確保しようということになります。「枠で取る」というやり方がB2Bでいうと、増えているなと感じます。
IT変革の進捗とマーケティング予算の関係
飯室氏:ではその会社として、売り上げも上がらないのにマーケティング予算を上げる会社があるかと言ったら、まずないですよね。先行投資で3年先のマーケティング投資ということもまずないので、伸びている会社はマーケティング投資を増やしている。
並行して増えていくと思うのですが、思い当たる部署のことを考えると、今売り上げが伸びていない部署はマーケティング予算が凍結されている部署もあります。横ばいでも新製品が出るのでシフトさせられていて、総量が変わらないからという使い方をさせられているので、本当の意味でマーケティング予算がIT予算を超えたと言っているのは成長している会社なのでしょうか。
尾花氏:ITの変革が進んでいない限り、マーケティングがITの予算を超えるということはまずないですよね。それは先ほど飯室さんがおっしゃったように、インフラの固定費がIT予算として削減されない限り、これを維持したままマーケティングが超えるというのは、いくら同じテクノロジ投資といっても、倍になってしまうという話です。
ですので、超えるというのは総量が少しは上がるのでしょうけど、ITが減っているというのはインフラたるどうしても必要なレガシー。分野はレガシーでしたが、テクノロジ的に新しくなって費用感が減ったが故に、クロスオーバーする可能性が出ているということが今の日本の状況ではないでしょうか。
ZDNet:マーケティング予算がIT予算を超えることには懐疑的であるし、日本ではだいぶ状況が違うということでしょうか。
中東氏:どこまでをマーケティング予算というかですね。2016年「日本の広告費」は6兆2880億円でしたか。それで日本のIT市場は2016年は14兆6000億円。そもそも足りていない。だから何をマーケティング費というか、どこまでとらえるか。単なる宣伝費だけなのか。多分それに付随するインフラとか、構築費とかいろいろなものが入ってくると思うので、そこまで含めたときにIT予算が変動しているかもしれないという話と、レガシーなIT予算というものが間違いなく縮小しているというところです。
飯室氏:インフラのように使えるようになったことで、それが投資か資産かという線引きがあいまいになっていることもありますね。定義がいろいろあるのではないでしょうか。
中東氏:そのシフト、トランスフォーメーションは結構あるかもしれませんね。インフラがそのように変わってきて、いろんなサービスも従量課金で使えるようになってきたという段階で、マーケティングもお金を出しやすくなってきた。できるようになってきたということですよね。
マーケティング費用は、思いついたらすぐに試して、3カ月でもすぐに撤退できる、調子悪かったらすぐに撤退したいというのが基本なのです。そういうビジネスにフィットしたインフラの形になりつつあるということが大きいし、おそらくその流れは止まらないのではないかと思います。
<第2回へ続く>