マーケティングオートメーション円滑導入に必要な”社内調整”とは

羽野三千世 (編集部) 2015年10月21日 07時00分

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 GEヘルスケア・ジャパンは、CT(コンピュータ断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などの大型画像診断装置から在宅医向けポケットエコー、造影剤や研究用試薬などを幅広く提供する医療機器メーカーだ。同社は2014年6月に、病院や医師に向けたデジタルマーケティングの社内基盤として、米Marketoのマーケティングオートメーション(MA)ツール「Marketo」を導入し、運用成果を上げている。

 導入プロジェクトを指揮する同社 チーフ・マーケティング・オフィサーの伊藤久美氏は、MAツールを効果的に運用するポイントは「マーケターと営業担当者の連携」だと指摘する。同社がMAツールに期待していたこと、MAツールを効率的に運用するための社内調整、数々のパイロット案件からみえてきたMAツールの効果と課題について、伊藤氏に話を聞いた。

--まず、GEヘルスケア・ジャパンがMAツールを導入した背景について教えてください。


GEヘルスケア・ジャパン チーフ・マーケティング・オフィサー 伊藤久美氏

 高齢化に伴う医療費高騰への対応策として、国は2025年を目標に高度急性期病院を重視する戦略を転換し、代わりに回復期や初期治療を担う小規模病院やクリニックを増やそうという大改革を進めています。

 当社がこれまでCTやMRIなどの大型医療機器を担当者が直接訪問して営業していた大病院が半数に減ってしまう。このような経営環境の変化に対応するために、今、新たな市場を開拓し中小規模病院向けに小型化した製品を販売しようとしているわけですが、国内には10万ものクリニックが存在します。代理店を活用しても直接営業できる数ではありません。

 さらに、クリニック側にとっても、少ないスタッフで忙しく診療を回しているため、営業担当者に足繁く通ってきてほしいというわけではありません。Eコマースで購買を完了したい、サポートはチャットなどのオンラインで対応してほしい、などのニーズがあります。直接営業だけではない、メールやチャット、場合によってはビデオチャットなどの「オムニチャネル(複数チャネル)」で販売経路の拡大が求められている、このような時代に適応するためにMAが必要です。

 それとは別に、従来からの大病院をターゲットとしたマーケティングでもこれからはMAが重要になります。大病院が減少していく中で、従来は「○○病院の○○科」の粒度でターゲティングしていたところを、今後は「○○科の○○先生」のレベルで細分化した情報をメルマガなどで発信し、見込み客獲得の成功率や成約率を高めていくことが必要だと思っています。

 特に、医療の世界はMA活用の効果が大きい業界かもしれません。と言うのも、当社が医療従事者向けに配信しているメルマガは開封率が予想以上に高く、製品によってはなんと50%以上、全体の平均でも約30%あります。こんなに高い開封率はこれまで見たことがなく、前職でも開封率は1桁%程度でした。医療業界に転職した当時は、この業界はITの受け入れ度が低く、デジタルマーケティングの効果は薄いのではないかという仮説を持っていましたが、この仮説が覆されたのは嬉しい驚きでした。

--MAツールとして「Marketo」を選定した理由は何ですか。

 Marketoを導入する以前から、バイオ関連製品を扱うライフサイエンス部門では、MAツールとして「Hubspot」(米Hubspotが開発)を使っていましたが、全社では活用されていませんでした。ITベンダーとしてMAを提供する側だった私がGEヘルスケア・ジャパンに入社したタイミングで、全社で活用できるMAツールを選び直そうということになり、ツールの選定を開始しました。

 ツールの選定を始めて間もなく、グローバルのGEヘルスケアグループが全世界でMarketoの導入を決定しました。すでに全世界で営業支援システムとして活用している「Salesforce.com」との親和性が高かったこと、刻々と変わる変化への対応が可能で大規模導入に適していたことから、Marketoが選定されたと聞いています。

--Marketo導入にあたっては、MAツールを効率的に運用するための社内調整に力を入れたそうですね。

 MAのような新しいシステムは、関連する社員全員が納得感を持って導入しなければうまく機能しません。2014年6月にMarketoの導入が決まり、翌7月に、本社主導のマーケター向けの導入ワークショップを日本でも行うことになったのですが、日本では、CMOと営業本部長が共同オーナーになって先導するという形にして、マーケターだけでなく営業部門の人たちにもワークショップに参加してもらいました。

 敏腕な営業ほど自分の仕事に自信があり、マーケティング部門からの案件など期待していません。きちんと営業チームが活用してもらえるよう、あらかじめマーケティング本部と営業本部で、MAを使う上でのSLA、 “MAでこういう結果が出たらこう動く”というような約束事を決めておく必要があると考えました。

 ワークショップに営業担当者も参加してもらうために、内容を日本語に翻訳した上で、さらにマーケティング用語を営業に理解しやすい一般的な言葉に言い換えて再構成しました。この3日間のワークショップを通じて、営業側にある程度納得感を持ってもらえたと感じています。そのような社内調整を経て、2014年9月からMarketoのパイロット活用を開始しました。

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