海外コメンタリー

グーグル傘下DeepMindと英NHSの取り組みにみる、医療分野へのAI活用の今とこれから - (page 3)

Jo Best (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2017-04-20 06:30

 Royal Freeは2016年、DeepMindとの提携を発表した。その際には、「Streams」というアプリを用いて急性腎臓障害のリスクが高い人々を洗い出すとしていた。DeeepMindのこのシステムは、患者の血液検査結果やその他のデータを定期的に監視することで、患者の容態が悪化した際に専用のハンドヘルドデバイス上のStreamsアプリ経由で臨床医に警告を通知し、医療スタッフが予防措置を講じられるようにするものだ。

 米ZDNetがRoyal Freeに対して情報開示を請求したところ、このシステムは2017年の1月に初めて実際の患者に使用されたという回答を得た。また、展開の第1段階では最大40名の臨床医がStreamsを使用し、「Royal Free Hospitalを皮切りにRoyal Freeのすべての施設に展開していく」との話だった。

 Royal Freeほど野心的ではないが、Imperial College Healthcare NHS Trustも同様の提携をDeepMindと締結している。Imperialはこの提携を発表した際、電子カルテシステムと、DeepMindあるいは他社の臨床アプリ間とのデータのやり取りを可能にするAPIの実現を目指すと述べていた。

 ただしImperialは、この提携が最終的にStreamsの展開を見据えている点も明らかにしていた。米ZDNetがImperialに情報開示を請求したところ、4月か5月にStreamsアプリのパイロット運用を開始する予定にしており、現在は技術面と臨床面での承認に向け、同トラストのガバナンスプロセスを進めているところだという回答を得た。

 回答では、Streamsのパイロット運用がどこで実施されるのかや、どれだけのスタッフが関与するのかといった詳細は明らかにされなかったが、「限定された環境下で、既存の対応プロセスや手続きと並行して運用される」と付け加えられている。

 Imperialは、機能面では今のところRoyal Freeの後を追いかけようとはしていないようだ。Imperialによると、初期の展開では警告通知機能を使用する予定はなく、通知されてきた警告に基づいて医療スタッフが対応するという運用を開始する時期については未定だという。

 Imperialのウェブサイトには「今回の提携によってAI技術を使用するようになるわけではなく、本トラストとDeepMindの間での合意はAIの使用を許していない」と明確に記述されている。DeepMindがAI企業としてよく知られている点を考えると、Streamsの運用にAIの要素が含まれていないというのは興味深い。

 ただ、GartnerのアナリストであるAnurag Gupta氏によると、StreamsはAIというよりも標準的なアナリティクスソフトウェアに近いアプリケーションだという。

 「Streamsは現時点ではAIと何の関係もない。これは基本的にいくつかの異なるシステムから情報を収集し、NICEのプロプライエタリなアルゴリズムを用いたうえで(中略)複数のシステムからの情報を容易に理解できる形式で提示するというものだ。これは常識的なものだ。むしろビジネスインテリジェンス(BI)と言ってもよいだろう」(Gupta氏)

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