99%捨てられるエッジデータもリアルタイム分析へ--「The Machine」構想の意図 - (page 2)

末岡洋子

2017-06-14 07:30

現実になりつつあるThe Machine

 基調講演の最後を飾ったのは、HPEが開発中の次世代コンピュータ構想「The Machine」だ。

 Hewlett Packard LabsでThe Machineの開発を率いるirk Bresniker氏(チーフアーキテクト兼HPEフェロー)はまず、データの爆発と不寛容な消費者/ユーザーというトレンドを指摘する。


2年おきに、これまで人類が生成したのと同量のデータが生まれている。

 「Facebookは2016年5月、毎日4ペタバイトの情報を処理していた。2020年には自動運転カーだけで毎日4万ペタバイトのデータが生成されると予想されている」とBresniker氏。一方で、時代はリアルタイム。顧客も取引先も待ってくれないし、自動運転カーは遅延が許されない世界だ。

 エッジで生成されているデータの99%が捨てられている、とBresniker氏。「未加工データは価値がない。そこからリアルタイムで洞察を得る必要がある。自社がしなければ、競合がするだろう」と続けた。

 このような中で処理を行うには、現在のコンピューティングでは限界があるとしてHPEが着手したのがThe Machineだ。

 これまでCPUとメモリが直結していたモデルから、不揮発性メモリを中心に置き、必要に応じてSoCがアクセスするという「メモリ主導コンピューティング」を採る。2014年のHPE Discover Las Vegasで発表、2916年末のDiscover Londonでは実証実験に成功したことが発表された。そして今年5月、160TBのメモリを搭載した「最大のメモリシステム」の構築を発表した。

 Superdome Xで構築したThe Machineシステムでは、Apache Sparkは15倍、類似検索は40倍高速になったとのこと。大規模なグラフインターフェイスについてもアルゴリズム作成により100倍高速になったとBresniker氏は報告する。財務モデリングに至っては、モンテカルロシミュレーションのリスクモデルを再考することで1万倍高速になったという。「業界を完全に変える」とBresniker氏はその潜在性を表現する。


データの爆発、リアルタイムのニーズに応えるには全く違うものが必要、というKirk Bresniker氏

 既に現場での利用も始まっている。YouTubeの動画で、The Machineを知ってHPEにコンタクトを取ったというドイツの研究所DZNE(German Center for Neurodegenerative Diseases)は、アルツハイマーの研究で活用している。ステージに立ったDZNEのPierluigi Nicotera博士、Joachim Schultze氏は「使い始めて2週間だが、すでにゲノムデータの計算が9倍高速に行えている」と満足顔だ。「100倍高速化も可能」とみる。同機関には患者3万人、30年分のデータがあり、The Machineという膨大なパワーを得たことで、今後は患者の病気に関するデータ、薬についてのデータ、画像データなども取り込んでいきたいという。「研究が大きく加速できると期待している」と述べた。

 なお、高性能コンピューティングの例では、1月に人間のポーカーに勝利したカーネギーメロン大学のAIシステム「Libratus」が、12TBのRAMを搭載したSuperdome XなどHPEの高性能システムで構成される「Bridges」を使っていることも披露した。

 Bresniker氏は最後に「HPEは顧客の将来を考えている。次のコンピューテイングの波を一緒に作ろう」と会場に呼びかけた。

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