ハードから読み解くITトレンド放談

サーバの復権を狙うAMD--EPYCプロセッサのエンタープライズ向けRASの実態

山本雅史

2017-07-13 06:00

 AMDが投入するサーバ向けプロセッサの「EPYC」は、最大4つのCPUダイを内蔵し、32コア/64スレッドを実現している。4つのCPUダイ間は「Infinity Fabric」というインターコネクトで接続される。CPUダイ間には32ビット幅のバスが使用され、42.6GB/sの高速のインターコネクトが用意されている(なおCPUダイは、コンシューマー用の「Ryzen」のダイが使われている)。

 Infinity FabricはP2Pのインターコネクトだ。このため、1つのZenのCPUダイから3系統のInfinity Fabricが出ている。2ソケット製品の場合は、対応するもう一つのソケットのCPUダイとの接続にInfinity Fabricを使用するため、ZenのCPUダイから4系統のInfinity Fabricが出ていることになる(4つのCPUダイを搭載しているプロセッサでは、4リンクのInfinity Fabricがもう一つのソケットに対して出ている)。

 ソケット間のInfinity Fabricの帯域は38GB/sとなり、4リンクを合わせて152GB/sになる。ただし、ソケット内部のInfinity Fabricに比べると距離が長く、より電力を消費する。EPYCのダイは、PC向けのRyzenプロセッサのCPUダイをそのまま利用しているため、それぞれのダイにメモリインターフェースを搭載している。


Infinity Fabric がCPUダイ間を接続している。1ソケットのEPYCでは、1つのCPUダイから3本のInfinity Fabricによって、全てのCPUダイとダイレクトに接続する

2ソケットのEPYCの場合は、1つCPUダイで4本のInfinity Fabricを持ち、1本のInfinity Fabricは別のEPYCと接続する

 EPYCのメモリインターフェースは、CPUダイごとに2チャンネルが用意され、最大DDR4-2667のメモリをサポートしている。1チャンネルに2枚のDIMMを搭載できることから、最大では16枚のDIMMを搭載でき、最大メモリ容量としては2TBにとなる。1チャンネルあたりの帯域は21.3GB/sで、ソケット全体では171GB/sのメモリ帯域になる。対応メモリとしては、RDIMM/LRDIMM/NVDIMM-N/3DS DIMMなどがサポートされている。


EPYCはCPUダイごとに2チャンネルのメモリインターフェース(チャンネルあたり2枚のDIMMをサポート)を持つ。8チャンネル(合計16枚のDIMM)で、最大メモリ容量は2TB

 EPYCでは、CPUダイごとにメモリが接続されているため、CPUダイ間をまたいだメモリアクセスに関しては、やや”ペナルティ”が存在する。ソケット内部のInfinity Fabricが高速であることから、大きなペナルティにはならないが、ハイパーバイザなどを利用する上では、仮想マシンをCPUダイと同じメモリ上に持つようにしないと、高いパフォーマンスを発揮できない。

 またEPYCは、128レーンのPCI Express(8×16リンク)をサポート(帯域は256GB/s)する。ただ、ソケットごとに128レーンというわけではなく、システムごとに128レーンとなるため、2ソケットシステムでも、1ソケットシステムでも、同じ128レーンになる。


EPYCは128レーンのPCI Express Gen3をサポートしている

 この他、CPUにUSB 3.0×4、SMBus、TPM、GPIO、SATAなどが統合されているため、プロセッサ以外の周辺チップなどは必要ない(EPYCはSoC化されている)。Ryzenのダイにも、周辺インターフェースとしてSCH(Server Controller Hub)が搭載されているが、デスクトップ用途としては機能が不足するため、RyzenではSCHをオフにして、外部の周辺チップセットを使うようにしているようだ。


EPYCはCPU内部に各種I/Oチップも内蔵している

 128レーンものPCI Expressを使用できることから、最大6枚のGPGPUカードを搭載できる。GPGPUは、従来のようなグラフィックカードとしてだけではなく、人工知能(AI)分野のディープラーニングやニューラルネットなどのアクセラレータとしても使われるようになり、1つのサーバに1~2枚のGPGPUカードしか搭載できないXeonプロセッサに比べて、EPYCの大きなアドバンテージになる(Xeonなどでは外付のPCI Expressスイッチなどを経由する必要がある)。また、複数台のフラッシュストレージ(NVMe)を1台のサーバに搭載できるため、大容量データベースなどの高速処理にも適しているといえるだろう。


多数のPCI Expressをサポートし、1つのプロセッサに大量のNVMeフラッシュメモリを搭載できる

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