古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

HPEの開発部門におけるDocker基盤導入の検討 - (page 3)

古賀政純(日本ヒューレットパッカード)

2017-11-20 07:15

 以前の連載でも紹介しましたが、Dockerは、IT基盤の計算資源の利用効率や柔軟性が高く、開発者にとっても、手軽にアプリケーション開発の環境を提供できるため、DevOpsという観点で、以下のようなメリットをもたらします。

競争力強化、顧客ニーズの変化に対する敏捷性(びんしょうせい)の向上

 ・開発環境や本番環境でユーザーが利用する「アプリケーション環境」を迅速に稼働できるようになることで、新しいアプリケーションを市場に素早く提供し、ビジネスニーズに素早く対応できるようになる

 ・例)面倒な仮想マシンのOSインストール作業や、OSの起動処理、OSシャットダウン処理もなく、dockerイメージさえあれば、docker runの命令一行だけですぐにアプリ環境が起動できる


ソフトウェア開発基盤にDockerを採用した理由その1:アプリケーション環境の迅速な稼働

IT基盤の有効利用:さまざまなIT基盤への移植が容易

 ・開発ツールがインストールされた開発環境や、本番モジュールが入ったアプリ環境を他のDocker環境に簡単にコピーすることができ、コピー直後からすぐに稼働できる

 ・コンテナ自体が軽量であり、Dockerイメージのサイズも小さいため、移植先のハードウェアの選択の幅が非常に広い

 ・例)開発環境において「docker save」で取得したtarアーカイブを別のDocker環境(本番環境)にコピーし、「docker load」で素早く移植し、すぐにコンテナを実行できる


ソフトウェア開発基盤にDockerを採用した理由その2:アプリケーション環境の移植が容易

アプリやツールの部品をすぐに利用し、開発に専念

 ・開発部門は、IT部門から提供されるアプリケーション入りのさまざまなDockerイメージをつかって、すぐに開発を始めることができる

 ・開発部門は、開発ツールやアプリケーション入りのDockerイメージを入手することで、OSのインストールやツールのインストールといった環境構築の手間から開放され、マイクロサービスの開発に専念できる

 ・例)開発や本番環境に必要な部品(Dockerイメージ)保管したDockerレジストリサーバを用意し、開発部門は、入手した部品をマイクロサービスが稼働するDockerコンテナとして稼働させ、それらの複数のマイクロサービスを連携させて一つのアプリケーションを比較的手間を掛けずに構築・稼働させることができる

 以上のことから、Dockerは、次世代型の効率的な開発・運用環境を実現する非常に洗練されたソリューションといえます。


ソフトウェア開発基盤にDockerを採用した理由その3:アプリやツールの部品をすぐに利用し、開発に専念

開発部門が享受できるメリット

 HPEの開発部門にとって、Docker基盤は、どのようなメリットが得られるのでしょうか?復習になりますが、 以前の記事で非常に簡単なDockerfileの時間短縮の例をご紹介したとおり、Dockerを使うことで、アプリケーションの開発期間やテスト時間を大幅に短縮できます。

 また、以前の記事「クラウド事業者のハードウェア事情と『Docker』の関係」でも話したように、Dockerコンテナの導入により、ハイパーバイザ型の仮想化ソフトウェアの仮想マシン(VM)をホストする必要がなくなり、Dockerは、ハイパーバイザ型の仮想化ソフトウェアのライセンス運用経費、OPEXを節約できます。ハイパーバイザの抽象化レイヤが削除され、ハイパーバイザーのオーバーヘッドを排除でき、ビルド処理やテストにかかる待ち時間が大幅に短縮されます。物理サーバ上にインストールされたOSで稼働するDockerエンジンを使用することで、作業の効率化、性能向上、そして、ライセンスコストの大幅削減を実現できる点は、IT部門にとって決して見逃せないポイントと言えるでしょう。

古賀政純
日本ヒューレットパッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト
兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバのSE及びスーパーコンピュータの並列計算プログラミング講師、SIを経験。2006年、米国ヒューレットパッカードからLinux技術の伝道師として「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。プリセールスMVPを4度受賞。現在は、日本ヒューレットパッカードにて、Linux、FreeBSD、Hadoop、Dockerなどのサーバ基盤のプリセールスSE、文書執筆を担当。Red Hat Certified Virtualization Administrator、Novell Certified Linux Professional、Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack、Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoopなどの技術者認定資格を保有。著書に「Mesos実践ガイド」「Docker実践ガイド」「OpenStack 実践ガイド」「CentOS 7実践ガイド」「Ubuntu Server実践入門」などがある。趣味はレーシングカートとビリヤード。

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