古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

クラウド事業者のハードウェア事情と「Docker」の関係

古賀政純(日本ヒューレットパッカード) 2016年09月15日 07時00分

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 こんにちは。日本ヒューレットパッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純です。近年、オープンソースをベースとしたクラウド基盤が検討されるようになってきました。クラウド基盤では、一般的に、仮想化技術が利用されることから、クラウドというと「ハードウェアを排除し、仮想化技術を駆使するIT」というイメージがあるかもしれません。しかし、クラウドサービスとハードウェアは密接に関係しており、次世代のクラウド環境を模索する事業者では、IT資源の利用効率向上やコスト削減を強く意識したハードウェア選定やDockerの検討を行っています。今回は、Docker登場以前から存在する従来の仮想化技術を振り返りつつ、欧州のクラウド事業者のハードウェア事情とDockerがもたらすメリットについて解説します。

Docker登場以前の仮想化技術をベースにしたクラウド基盤

 近年、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアであるOpenStack(オープンスタック)の導入が徐々に増えてきています。OpenStackによるクラウド基盤では、Linux OSに搭載されている仮想化技術が広く利用されています。仮想化技術は、クラウドコンピューティングよりもはるか昔から存在する技術ですが、なぜクラウド基盤において仮想化技術が利用されているのでしょうか。それを理解するためには、仮想化技術の仕組みを理解する必要があります。

 一般的な仮想化環境では、ハードウェアとユーザーのOS環境の間の「仲介役」であるハイパーバイザが仮想化のエンジンとして稼働します。ハイパーバイザは、ユーザーが利用するOS環境が稼働するための仮想的なハードウェア=「仮想マシン」を提供し、ユーザーに物理的なハードウェア環境を隠蔽します。仮想マシンにインストールされたOSは、一般的に「ゲストOS」と呼ばれます。仮想化技術において非常に重要なのは、ハイパーバイザが物理環境を隠蔽することにより、ゲストOSがインストールされた仮想マシンは、単純な「ファイル」として取り扱えるという点です。OS環境をファイルとして取り扱えるこの画期的な仕組みにより、複数のOS環境を迅速かつ容易に配備、利用、廃棄できます。

 一方、クラウド基盤において、ユーザーは、セルフサービスポータル画面から自分が利用したいハードウェアの規模やOS環境を選択し、利用申請を行います。利用要求が許可されると、ハードウェア資源とゲストOSの割り当てが自動的に行われ、ユーザーは、申請したOS環境をすぐに利用できます。ユーザーの利用契約が終了すれば、ハードウェア資源やOS環境は速やかに解放されます。このように、OS環境の作成、利用、廃棄が容易にできる仮想化技術は、クラウドサービスのような大量のユーザーがOS環境を自動的に作成、利用、廃棄するITシステムの実現に大きく寄与できることは容易に想像できます。


クラウド基盤では仮想化技術が広く採用されている

クラウド基盤における仮想化から物理化への回帰

 仮想化ソフトウェアにより、クラウドコンピューティングに求められるユーザー環境の迅速な配備、利用、廃棄が容易に行えるようになった反面、いくつかの課題も見えてきました。それは、仮想化ソフトウェアにかかる費用です。仮想化ソフトウェアには、使用料(ライセンス)が存在するものや、商用のLinuxでは、OSのサブスクリプション(=バグ修正、パッチの入手、技術サポートサービス等を受ける権利)に費用がかかります。

 ホスティングベンダーでは、これらの費用を削減するために、物理サーバホスティングを導入するケースが散見されます。物理サーバホスティングは、仮想化ソフトウェアを排除し、ユーザーが物理サーバ上にインストールされたOS環境を利用するため、一般的にベアメタル(=物理サーバ)クラウドと呼ばれています。しかし、物理サーバホスティング、ベアメタルクラウドというと、物理サーバ台数の増加による設置スペースの切迫や電気代が懸念されます。

 そこで、欧米のサービスプロバイダーでは、仮想化ソフトウェアのライセンスやサブスクリプション、設置スペース、電気代に関する経費削減を同時に実現するため、省電力のカートリッジ型サーバを採用しています。欧州で有名な大手ホスティングサービス事業者のmyLoc(マイロック)社は、手のひらにのるサイズの大きさで、かつ、消費電力が1台10数ワットから20数ワット程度のカートリッジ型サーバを導入しています。さらに、無償のLinux OSを組み合わせることで、ソフトウェアにかかる費用を削減しつつも、電気代の低減、サーバ集約を実現しています。カートリッジ型サーバは、従来の標準的なx86サーバに比べて圧倒的な高密度実装によりサーバ集約を物理レベルで実現しているため、仮想化による集約が不要なのです。いわば、myLoc社が採用した方法は、「仮想化から物理化への回帰」と言えます。


大手ホスティングサービスのmyLoc社では、仮想化ソフトウェアのライセンス、サーバ設置スペース、電気代の低減に取り組む

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