こんにちは。日本ヒューレットパッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純です。今、世界のIT基盤は、人工知能、ビッグデータ、ハイブリッドクラウド、DevOpsなどの先進技術を駆使し、従来とは異なる新たなビジネスを生み出そうとしています。その新たな価値を生み出す重要な要素の1つに「Docker」が挙げられます。
2020年の東京オリンピックを見据えた日本は、先進的なITを国家戦略の中核に位置づけ、「世界最先端IT国家」への道を歩むことを国として表明しています。そして、欧米の先進的なITを駆使する国や企業を相手に、日本は、最先端ITを駆使して戦っていく必要があります。しかし、2016年時点での日本の現実に目を向けると、先進的なITに対する懐疑的な見方も散見されます。特に、Dockerに対しては、誤解やネガティブな考え方を持つ方も少なくありません。今回は、2016年時点における日本のITの現場の声に耳を傾けつつ、DockerがもたらすITの革新にせまります。
日本のITの現場の声に耳を傾けてみる
ビッグデータ、ハイブリッドクラウド、DevOpsと呼ばれるITの先進技術とDockerを駆使することについて、日本の企業におけるITの現場ではどのような意見があるのでしょうか。筆者は、イベント登壇などで、IT部門の技術者などが集まるオープンソースソフトウェアの情報交換会に参加することがあるのですが、そこでは、ITとビジネス変革について、以下のような現場の生の声が聞こえてきます。
- 「ウチの会社は、事業内容に変化がないから、今のIT基盤で業務がずっと安定して動いていることが大事。社内クラウドでサービス化するなんて不要だと思う。Dockerは、開発部門が少しアプリのテストで使ったことがあるという情報を耳にしたが、本番システムにDockerを入れて不具合があっても困るので、今の安定したシステムに手を入れるつもりはない」
- 「顧客のニーズを把握、予測したいのはわかるが、業務の自動化、ビッグデータで知能化なんて到底ウチの会社でできる気がしない。Dockerというキーワードはよく耳にするけど、Dockerって仮想化技術の一種って聞いたから、ビッグデータや人工知能とは無関係だと思うし、そもそも、Dockerもビッグデータも2つも新しいことを習得するための予算も時間もないし、人材もいない」
- 「ウチの会社は2016年現在、仮想化がやっとで、クラウド化(サービス化)も全然できていないし、ましてや、Dockerを組み合わせるなんて雲の上の話。会社の上層部からは、ITでコスト削減と言われているので、仮想化ソフトと省電力のカートリッジ型のコンピュータを入れるのが関の山。巷で流行しているハイパーコンバージドの仮想化向けハードのGUI操作がとても簡単で、素人でも操作できるし、現状ウチの会社は、それで十分なのでDockerはいらない」
- 「開発と運用を両輪でまわすと言われてもピンとこない。ウォーターフォール型開発で作った今のITシステムは、不具合解消も運用部門だけでうまくまわすことができているし、Dockerみたいな新しい技術を無理矢理入れる必要もないと思う。ウチは、できるだけパッケージソフトウェアを使うようにしているし、開発は極力しないという方向だから、Dockerは不要」
皆さん、いろいろ悩みや事情を抱えていることがわかります。「今のシステムで不満はないから」という理由で、積極的に先進技術の導入をしない方もいますし、パッケージソフトを使っているからDockerは要らないという方もいます。
また、よく耳にするのが「Docker=仮想化の一種」という声です。中には、「Docker=仮想化だからビッグデータとは無関係」という声もあります。確かにユーザー側からは、Dockerは“ハイパーバイザー型の仮想化ソフトと同様に、異種Linux OSの混在が実現でき、サーバ集約ができそうなソフト”のように見えますので、「Docker=仮想化」という認識が広くあるのでしょう。しかし、「Docker=仮想化=ビッグデータとは無関係」という考えは、果たして正しいのでしょうか。
情報交換会で聞こえてくる声