IDC Japanは7月25日、2015年の国内仮想化ソフトウェア市場規模実績と2020年までの予測を発表した。IDCでは仮想化ソフトウェアを、「バーチャルマシン/クラウドシステムソフトウェア」(一般的にはハイパーバイザ)と、「バーチャルクライアントコンピューティング」(従来のデスクトップ環境を改善するための一連のソフトウェア)の2分類で定義しており、2015年の国内バーチャルマシン/クラウドシステムソフトウェア市場規模は前年比5.7%増の552億9900万円、同じく2015年の国内バーチャルクライアントコンピューティング市場規模は前年比3.7%増の236億7000万円と予測した。
また、国内バーチャルマシン/クラウドシステムソフトウェア市場の2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:)は6.0%で2020年には741億円になると予測、同じく2015~2020年の国内バーチャルクライアントコンピューティング市場はCAGRが6.8%、2020年には329億円になると予測している。
2015年~2020年 国内仮想化ソフトウェア市場売上額予測
国内バーチャルマシン/クラウドシステムソフトウェア市場は、IDCが国内で調査を開始した2005年から2014年までの10年間にわたり二桁の前年比成長率を維持していたが、2015年はそれを達成することができなかった。10年間連続二桁成長自体、ソフトウェア市場の中では他に例を見ないことであったが、2015年には市場の成長が減速した。
一般にハイパーバイザーと呼ばれているバーチャルマシンソフトウェアによるサーバ仮想化は、すでに多くの企業で導入されサーバーインフラの標準となっている。さらにデスクトップ仮想化におけるインフラとしての役目も果たしてきたが、仮想基盤の構築に対する投資が一巡したと同社では分析。2016年以降は仮想基盤の更新や拡張に対する需要を中心に前年比一桁後半の成長率を続けていくとみている。また、当該市場にはOpenStackやDockerに代表されるクラウドシステムソフトウェアが含まれ、2015年時点ではその規模は非常に小さい状況ではあるが、徐々に本番環境での導入事例も出てきており、2016年以降の市場成長の主要因になるとみている。
一方、クライアント仮想化ソフトウェアである国内バーチャルクライアントコンピューティング市場も、2015年は一桁の前年比成長率となった。長らく市場を支えているプレゼンテーション仮想化の導入が伸び悩み、さらにシンプルなシステム構成によって使用されるソフトウェアの売上単価も下落傾向にある。
デスクトップ仮想化は高い成長が続いているが、大型案件の減少やDaaS(Desktop as a Service)の台頭で成長は鈍化傾向にある。2016年以降もクライアント仮想化の普及が進み、市場は堅調な成長を続けていくとみられるが、バーチャルクライアントコンピューティングシステムの集約化、DaaSやサブスクリプションモデルへのシフトが市場成長の抑制要因になることにも注意しておく必要があると指摘する。
IDCは、仮想化ソフトウェア市場の成長が落ち着いてきたということは、ユーザー企業のデータセンターにおいて仮想基盤がしっかり形成されたことの表れでもあると指摘。次のステップは仮想基盤にコントロール機能を付加したクラウドネイティブシステムへの拡張となる。ソリューションベンダーはOpenStackやDockerなどのクラウドシステムソフトウェアを活用したソリューションを主軸にすべき時期に来ていると説明している。