NEC、英ITサービス企業を買収--海外セーフティ事業の拡大基盤に

國谷武史 (編集部)

2018-01-10 06:00

 NECは1月9日、公共向けITサービスを手掛ける英Northgate Public Services(NPS)を4億7500万ポンド(約713億円)で投資ファンドCinvenから買収すると発表した。買収は1月末に完了する見込みで、NECはNPSが強みとする英連邦圏市場でのセーフティ事業の展開を視野に入れる。

 NPSは1969年に設立され、従業員は約2000人。英国などの政府機関や警察向けのソフトウェア開発およびSaaS事業を手掛ける。2017年4月期の売上高は1億6350万ポンドで、構成は政府および公営住宅向け事業が74%、警察およびヘルスケア向け事業が23%となっている。

英NPS買収について説明するNECの新野隆社長''
英NPS買収について説明するNECの新野隆社長

 同日記者会見したNEC 代表取締役 執行役員社長 兼 最高経営責任者(CEO)の新野隆氏は、NPS買収の狙いについて、利益率の高いビジネスモデルへ転換を図るための海外セーフティ事業の拡大における施策だと説明。この買収によりNECは、2020年度に海外セーフティ事業で営業利益率5%以上、EBITDA率(税引前利益と特別損益および支払利息、減価償却費を加算した値)20%以上の達成を見込む。

 NECのセーフティ事業は、指紋や顔などの生体認証技術と人工知能(AI)やデータアナリティクス技術などを活用した「安心・安全」に関するソリューションの提供が柱になる。現在の事業規模は約1000億円で、国内と国外がそれぞれ半分程度。海外では40年に渡って70カ国で警察向けシステムや映像監視、ID管理、出入国管理など700以上のシステムを導入しているという。

 新野氏は、海外セーフティ事業の展開で「共通業務基盤」「分析基盤」「データ基盤」の3つの基盤を用いたソフトウェアおよびSaaSのビジネスモデルを採用し、利益率が数%程度にとどまる従来の個別SI事業からの転換を図ると説明。NPSは、英国の公共分野における「共通業務基盤」と「データ基盤」を持ち、これにNECの「分析基盤」を組み合わせることで、相乗効果を高められると語った。

NPSの買収でNECは英国を含む英連邦の公共向け市場への事業展開を期待する''
NPSの買収でNECは英国を含む英連邦の公共向け市場への事業展開を期待する

 具体的には、「共通業務基盤」の1つというNPSの犯罪事案管理基盤サービス「CONNECT」の英国シェアが提供開始から3年で29%に達したほか、自動車などのナンバー読み取りシステムや交通違反の処理システムの提供ではNPSが独占的な立場にあるという。また、社会保障給付のソリューションや公営住宅関連向けのソリューションでも高いシェアを持つとしている。

 NPSのITサービスはいずれも英国の公共向けが中心で、ITサービス全体の中での割合は比較的小さいものの、カナダやオーストラリアなど約13億人を抱える英連邦市場に事業展開できる優位性があり、NECは認証やデータ分析の技術を取り入れたサービスの高付加価値化によって利益率を高められる意義があると強調する。

NPS買収の意義''
NPS買収の意義

 なお、NPSは従来の主力事業だったビジネスプロセスアウトソーシングからSaaSへの構造転換に伴うコスト増などから債務超過にあるとし、NEC 執行役員 グローバルビジネスユニット担当の山品正勝氏は、今回の買収金額が債務解消を含めてNPSの将来性を適切に評価した結果だと説明した。NPSのCEO、Stephen Callaghan氏は同日の報道発表で、過去2年間における構造改革を経て、NECによる買収が技術開発および市場開発に向けた新たなステップになるとコメントした。

 NPS買収を含む今後の海外セーフティ事業などの具体的な見通しについて新野氏は、1月末に公表する新たな中期経営計画で明らかにすると述べている。

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