インシデントをもたらすヒューマンエラー

第3章:5つの原因で探るヒューマンエラーの抑止術--個人編

熱海徹

2018-02-14 06:00

 第3章では、「社員やスタッフに失敗させない」視点から、一人ひとりが日常的にできる対策を解説します。ミスを防止するには、原因を把握し、防止策を立てるのが基本です。ここでは、第1章で述べたヒューマンエラーの5つの原因に沿って話を進めていきます。

1.思い込み、判断の省略:

 これを防ぐには、作業に入る前に前担当者からの引き継ぎや作業連絡シートによって情報収集を行い、現状や変更点などを正確に把握します。その上で、不明な部分があれば必ず担当者に確認します。

2.注意転換の遅れ:

 体調が悪かったり心配ごとがあったりすると、誰でも集中力が低下します。冷静に判断し、いつも通り正常に作業が行えるよう万全の体調で業務に臨むのは当然の務めでしょう。ですが、どんなに気をつけていても風邪をひき、熱が出ることもあります。

 そんなときは、ちゅうちょせずに周りに相談することが大切です。他の人に代わってもらったり、時間を短縮したりするなど調整をしてもらい、自分は一日も早く体調を元に戻す努力をします。このような場合、管理者は決して本人を責めたり迷惑そうな顔をしたりせず、即座に対策を講じてください。むしろ、「ミスを未然に防止できてラッキーだ」と考えれば良いのです。交代要員を確保するためにも、勤務シフトは余裕を持たせておかなければなりません。

3.習慣的操作:

 「無意識に」「安易に」「反射的に」やってしまう人は、読者の皆さんの近くにもたくさんいるでしょう。こういう人は、同じ間違いを繰り返したり、パニックになってミスを重ねたりしてしまいがちです。ミスが習慣化しているのです。けれども、何か予期せぬことが起きて慌ててしまったときでも、落ち着きを取り戻せる手段があればミスの連鎖は防げます。普段から意識して、パニック回避術を身につけておけば良いのです。

 ちなみに私の場合は、まず「冷静に」と口に出し、深い深呼吸を3回繰り返すようにしています。無意識のミスは、多くの場合、同じ条件のときに起きます。失敗がトラウマになり、意識し過ぎて起こす場合もあります。一度の失敗を引きずらないためには、当事者だけでなく管理者の対応も重要ですが、これについては次項で述べます。

 このタイプの人が最もやるべきなのは、「手順書通りに作業を行う」ことです。これを疑わず面倒くさがらずに繰り返し行い、どんな場面でもいつも通りにできるところまで習得できれば、自信と安心が生まれ余裕を持って業務に当たれるはずです。それでもヒヤリ・ハットが起きてしまったときは、その原因と対策を紙に書いて自宅や職場のデスクに掲示し、これを繰り返さないよう自分に言い聞かせます。

4.判断の甘さ:

 大きなインシデントも、わずかな違和感で始まる場合が多いものです。「大したことない」と思っても、一人で判断せず作業パートナーや上司に伝える――これを習慣づけることです。私は、この報告が数時間後にミスの発見につながったというケースを何度も経験しています。「なんかいつもと違う!」――この気付きがあなたと会社を救います。

5.情報収集の誤り:

 情報の中身を理解できないときや納得できないときも上記の4の対策と同様に、作業パートナーや上司に聞いてみることです。複数の目で見て、考えることで、ミスの発見が早まります。

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