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インシデントをもたらすヒューマンエラー

第1章:人間は常にエラーを起こしている--そのメカニズム

熱海徹

2018-01-09 06:00

 ヒューマンエラーに起因する組織的なインシデントは、昔から大きなビジネスリスクとして、その対策が課題とされてきました。ヒューマンエラーを撲滅することは非常に難しく、むしろ抑止の観点から個人や組織の意識を高める取り組みが重要とされます。本連載では放送事故ゼロに向けて長年ヒューマンエラーの対策に取り組む筆者が事例を交え、解説していきます。

第1章:人間は常にエラーを起こしている

 今回はヒューマンエラーの原因となる「思い込み」「勘違い」「理解不足」などについて、それぞれのメカニズムや働く環境について考え、改善に向けた事例を紹介します。

 事故時の主な動機と背景要因をまとめてみました。

1.思い込み、判断の省略:「そう思い込んでいた」「確認しなかった」「いつも通りと思った」「点検や操作を省略した」

2.注意転換の遅れ:「次の作業や他の事に気をとられていた」「他の仕事に熱中していて時間の経過に気づかず手遅れになった」「用件が割り込んでそちらに気をとられた」「目先のことばかりにとらわれて、他の事に気が回らなかった」

3.習慣的操作:「無意識に習慣的にやった」「気軽、安易に手を出した」「反射的に操作した」

4.判断の甘さ:「そこまで影響するとは思わなかった」「この程度ならいいと思った」「相手に連絡すべきなのに気づかなかった」「相手は知っていると思った」

5.情報収集の誤り:「読み違い、聞き違い、早合点、勘違い」「予測や先入観のため情報を間違って受け止めた」「技量未熟・知識不足のため情報の意味がわからなかった」「与えられた情報が不明確、不正確だった」

 ヒューマンエラーで業務に影響を及ぼす状況が発生した場合、上長や同僚が、本人から直ぐに真相や原因を聞き出すことは難しいと思いますが、再発防止を考える観点から、上記のどこに当てはまるのかを確認することが大切だと思います。

 しかし、本人に、「なぜ思い込んでいたのか」と問いただしてみても、「全く気が付かなかった」という回答がほとんどなのです。「思い込んでいた」ことが悪いのではなく、間違いになぜ気が付かなかったのか、本人だけでなく周りの環境についても考える必要があります。

 2010年にさかのぼりますが、私が技術部長を務めていた時のことです。小さな工事作業ミスが多く、どうしたらヒューマンエラーを減らすことができるのか考えていました。特に「思い込み」のミスについては、作業員を2人のダブルチェック体制や、指差し確認の励行、各部屋に事故防止のポスターを張り付けるなど、全体に歩調を合わせるように実施してきました。一見して効果があるように思いがちですが、筆者の場合、掲出する場所が違っても同じミスを繰り返す現象がおき、「思い込み」によるヒューマンエラーを減らすことはできませんでした。

 私は、人間は常にミスを起こしていると思っています。つまり、職員にも「思い込み」などの現象が工事日の前日以前から起きているのです。

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