Oracle OpenWorld

オラクル幹部が示すSaaS事業とAI戦略--OpenWorld 2018で語った狙い

藤本和彦 (編集部)

2018-11-07 07:10

 米国サンフランシスコで10月に開催された「Oracle OpenWorld 2018」。そこで、OracleのSaaS製品マーケティング担当シニアバイスプレジデントであるJuergen Lindner氏、Adaptive Intelligence(AI)開発担当シニアバイスプレジデントであるClive Swan氏に、SaaS事業とAI戦略について、それぞれ話を聞いた。

 「OpenWorldは、顧客に対してイノベーションの成果を見せる大きなチャンスだ」――とLindner氏は語る。クラウドの登場によってソフトウェアを提供する形が変わってきた。Oracleでは10年前、統合基幹業務システム(ERP)、サプライチェーン管理(SCM)、人材管理(HCM)にわたる従来型アプリケーションのアーキテクチャをクラウド向けに書き換えた。

Oracle SaaS製品マーケティング担当シニアバイスプレジデントのJuergen Lindner氏
Oracle SaaS製品マーケティング担当シニアバイスプレジデントのJuergen Lindner氏

 今後5~10年においても、さまざまなテクノロジが組み合わさって、市場における競争原理は大きく変わるだろうと予測する。「われわれはテクノロジに対して非常に“浸透的”なアプローチを取っている。つまり、新しく出てきたテクノロジをアプリケーションにネイティブな形で実装しなければならないということだ。そのためには、アプリケーション全体が一貫したレイヤでつながっていなければならない」

 Lindner氏は「Oracle ERP Cloud」を企業にとっての戦略的なSaaS製品と位置付ける。大きな市場シェアがあるため、Oracleにとっても重要なアプリケーションだ。OpenWorldでは、サブスクリプション管理サービス「Oracle Subscription Management」を発表した。クラウドの時代においては、「Product as a Service」「Mobility as a Service」といったように、製品のサービス化へとビジネスモデルを変えていく必要がある。

 Subscription Managementは、顧客との購買契約に関する課金と収益認識を管理・可視化でき、反復的な収益モデルに対する予測ができる仕組みを構築できるものだ。あらゆる業界の企業が新しい消費モデルを受け入れ、商品とサービスから追加の収益を創出できるようになる。

 チャットボットなどを用いた会話型インターフェースにも力を入れている。AlexaやSiri、Slackといったツールを通じて音声などでタスクの処理を可能にする。Lindner氏は、出張経費を処理するボットを例に挙げる。機械学習を活用して撮影された領収書の内容を自動で読み取り、その認識結果をシステムに転送する。これにより、利用者は出張経費の申請書を書かなくてすむというわけだ。

 「人工知能や機械学習は、単純な繰り返し作業を自動化することができる。われわれはこれを“Intelligent Process Automation”と呼んでおり、Robotic Process Automation(RPA)なども含め、システム自体がさまざまなことを学んでいく。例えば、ワークフローの中で何十回と繰り返しの承認作業があると、そのプロセスをシステムが学習して、同じような状況で自動処理できるというものがある。財務経理やサプライチェーンの最適化に役立てられるはずだ」

 もう一つは「Intelligent Payments」で、会社に余分な現金があるときに、どのサプライヤーに優先して支払うべきかをAIアルゴリズムで判断し、提案するというものだ。財務とオペレーションにおける意思決定の品質とビジネスへの影響を改善する「Intelligent Performance Management」もERP Cloudに搭載された。

ブロックチェーンをサプライチェーン向けに提供

 サプライチェーン全体のトレーサビリティと透明性を強化する「Oracle Blockchain Applications Cloud」も発表した。「ブロックチェーンはこれから期待できる新しいテクノロジ。まずはサプライチェーンから提供する」とし、4つのアプリケーションを明らかにした。

 1つ目の「Intelligent Track and Trace」は、調達・製造・輸送の各段階でデジタル証跡を作成し、サプライチェーンにおける商品と取引のトレーサビリティを実現するもの。リコール対象製品の回収、紛争解決、偽造品の撲滅、規制順守、不正からの保護を可能にする。

 「Lot Lineage and Provenance」は、製品の全ての変換点を追跡することで、製品の系譜、シリアル、起源を参照できるようにする。規制順守、対象を絞り込んだ回収やリコール、偽造コンポーネントの流通防止に役立つという。

 「Intelligent Cold Chain」は、製薬および食品飲料業界の冷蔵製品の品質と安全性を確保するためのもの。温度制御されたサプライチェーンを監視、追跡し、プロセス最適化のための推奨勧告を作成する。

 最後の「Warranty and Usage Tracking」は、賠償請求・保証・保険などに関する紙ベースのプロセスを排除し、価値の高いアセットの使用状況の追跡を自動化するという。調停の迅速化と請求処理の促進、アセットの乱用を防止する。

AI活用で人材採用のミスマッチを防ぐ

 「才能のある人材の確保は難しくなっている。求められる技能によっては、人材が不足しているという現実がある。そこで候補者の中から最適な人材を採用することが重要になる」

 「Oracle Human Capital Management (HCM) Cloud」に新たに搭載された「Best-Fit-Candidate」機能は、会社の中で成功したと思われる社員の属性を測定し、どういう人材を採用すればいいかをAIが予測する。「機械学習を使って採用の失敗を防ぐ」というもので、採用サイクルの短縮や従業員の離職率低下に役立てられるとしている。

 また、HCMにも会話型UIが組み込まれている。例えば、「有給がどれくらい残っているか」といった質問をボットに投げ掛けると、すぐにその答えを受け取ることができる。従業員のエンゲージメントと満足度を向上させ、同時に人事部門の生産性を改善する。

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