データ分析は結果も過程も大切--ビジネス視点の取り組み方

ZDNET Japan Staff

2019-08-12 06:00

 近年はデータ分析がビジネスで必要とされるスキルの1つに数えられるようになってきた。データを読み解くことで、例えば、顧客や市場の動きを知り、売上拡大につなげる手がかりを導き出す。そのために必要なスキル、経験、勘といった能力を兼ね備える人材が引く手あまただ。しかし、初心者であるほどに「難しい」と構えてしまいがちだろう。

 日本テラデータが7月24~25日、ビジネス視点でのデータ分析を体感するという一風変わったテーマのセミナーを開催した。通常こうしたセミナーでは、データ構造や関数、PythonやRといったコード、データ分析システムの構成などテクニカルな視点での内容が多く、初心者向けとしてもビジネス側の人々にとっては難解なこともある。このため同社は、ビジネス側のデータ分析の初心者が、「なぜデータを分析するのか」という本質への理解を深めてもらうことを目的に開催したという。

セミナーは「ビジネス視点によるデータ分析の基本を学ぶ」というテーマで行われ、約80人が参加した
セミナーは「ビジネス視点によるデータ分析の基本を学ぶ」というテーマで行われ、約80人が参加した

 セミナーでは、同社のデータ分析基盤「Teradata Vantage」のクラウド版を使い、顧客行動の経路分析、アトリビューション、感情分析、ウェブパフォーマンスといったビジネス課題に関するデータの分析を実際に体験する流れで行われた。実施初日は、大企業の事業担当者を中心に約80人が参加した。

 同社によれば、ビジネスにおけるデータ分析は“ブーム”の様相を見せる。かつてはエキスパートが基幹系システムに蓄積された膨大なデータをデータウェアハウスなどに集め、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールで分析するのが主流だった。そこにデスクトップ環境でも手軽にできるセルフサービスBIが登場し、ユーザーのすそ野が広がった。最近ではクラウドの処理能力とPythonやRなどの言語を駆使し、これまでエキスパートの独断の場だった高度な分析もビジネス担当者が担うケースが出てきた。

 これは結果的に、さまざまデータ分析環境が分断され氾濫する状態をもたらしたと、同社は指摘する。Teradata Vantageは、分析対象にするデータソースと接続してデータを集約し、関数や言語などに習熟していない分析初心者でも分析結果から「回答」にたどり着けるまでの機能をソリューション化したという。豊富な機能をうたうソリューションが多い中では、“分析の本質”に主眼を置いたソリューションだとしている。

「Teradata Vantage」の概要
「Teradata Vantage」の概要

 体験の一例では、商品を購入済み/未購入の顧客をベースとして、顧客の行動経路の分析からその理由を探るというシナリオで、実際にデータ分析の流れを理解するセッションが行われた。デモンストレーションのため、データセットや分析に使う機能はあらかじめ用意されたものだが、一連の流れを通じてその意味を実感できるものだ。

 このシナリオでは、まず顧客接点のデータとして、コールセンター、オンラインショップ、実店舗のデータを指定し、顧客が商品を購入したか否かを“フラグ”に設定する。次に分析のための準備作業(データプレパレーション)として、顧客がいつ、どの接点にアクセスし、そこでの行為(例:問い合わせ、検索など)を踏まえ、商品購入の有無、返品といったまでの「セッション」を基準に各種のデータを結合する。この段階では、顧客ごとのセッション履歴を時系列で把握する。

 ここから経路分析を進める。セッションのデータから顧客ごとに、例えば、「商品情報を参照、店舗を訪問、サービスへの問い合わせ、商品を購入」や「商品情報を参照、返品の問い合わせ、ウェブチャットでやりとり、返品を実施」といった流れを把握していく。最後は、全顧客の行動の流れをフローチャートで可視化し、全容を把握する。

 この過程は非常に初歩的なものだが、多くのビジネス担当者が日常の業務で目にしているのは、分析を終えた“結果の情報”だろう。もちろん業務の目的に照らせば、分析結果の情報を元にした考察や仮説検証などの作業の方が重要かもしれない。だが、そこでの作業をより精度高く行っていく上では、データ分析の過程も踏まえておくことが役に立つと言える。

対象顧客の行動の全容をフローチャートで可視化した様子 対象顧客の行動の全容をフローチャートで可視化した様子
※クリックすると拡大画像が見られます

 上記のシナリオなら、「なぜ返品率が高いのか?」を明らかにするという目的において、「顧客の行動にはどのような段階や種類があるのか」「実際の行動の流れはどうなっているのか」「その流れにどのようパターンがあるのか?」を分析過程で理解する。そして、分析結果から理由を考察し、返品率を下げるための具体的な施策を検討していくという具合だ。分析結果を見るだけでは、有効性のあるアイデアを幾つも出すような効果は難しい。

 また、多少のデータ分析経験があっても用いる手法や視点などは、その経験の範囲にとどまってしまいがちだろう。日常業務の範囲で触れることのないデータ分析を試してみることもスキルの広がりにつながる。セミナーの参加者からは「顧客の行動経路分析は金融リスクの分析に応用できそうだ」「化学物質の分析に似ている」といった感想も聞かれた。

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