Dropboxがもたらした意外な恩恵
Dropboxの導入により、外部共有ファイルを適切な管理下に置くという、当初の目的は達成された。しかしDropbox導入の効果はそれだけに留まらなかった。一つはPC入れ替えの手間の削減だ。従来、2日程度を要し、システム部の負担となっていた入れ替え作業にDropboxを活用。従業員自身でデータ移行が可能となり、システム部の作業量を大幅に軽減している。
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議事録作成の負担も軽減している。Dropbox Paperを活用し、会議参加者全体で議事録を共有し、同時更新できるようになった。その結果、ドキュメント作成が効率化し、特定のメンバーへの議事録作成負担の集中を解消。今では議事録に留まらず、企画の草案や面接のアジェンダなど、さまざまな業務でDropbox Paperが活躍している。田島氏によれば、1日に300ファイルもの新しいドキュメントが、Dropbox Paperで生み出されているという。
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Dropboxの利用は、新型コロナウイルスのパンデミックによってさらに加速している。在宅勤務時には、オンプレミスのファイルサーバーより、Dropboxにアクセスする方が便利だ。さらに、ウェブ会議サービス「Zoom」による会議の際には、ホワイトボードの代わりにDropbox Paperで共同編集し、情報共有やコミュニケーションがさらに活性化している。コロナ以前のDropboxの利用量は1.5TBだったが、現在は3.6TBまで伸びているそうだ。
残された課題と今後の展望
Dropboxの導入にはいくつかの課題も残っている。一部業務については、Dropbox上で外部アプリケーションとの連携に支障が出たため、従来のクラウドストレージを利用し続けている。また当初は、オンプレミスのファイルサーバーの全面的置き換えも検討していたが、大容量データの高速マイグレーションツールの活用をコストから断念。ライセンス費用内で収めるため、緩やかな移行に留まっている。
全体としてはDropboxは想定以上のメリットをもたらしているものの、田島氏は「必須機能については、事前の入念な検証とヒアリングが欠かせない」と、今後導入を検討するユーザーに向けてアドバイスした。
最後に田島氏は、Dropboxの発展に期待しながら、Speeeのシステムの今後のあり方について次のように語った。
「今後は、クラウド時代に即したアプリの使い方を整備していきます。具体的には、業務に必要なアプリのライセンスを、必要な時に必要なだけ、柔軟に取得できるような仕組みを整えます。またDropboxのスマートワークスペースというコンセプトに沿って、あらゆるアプリやデータを一元的に管理する方向を目指します」
事業に必要なITが、さらにスマートかつ安全に利用できるように、同社のシステム部の挑戦はこれからも続く。