「AIスーツケース」の実証実験を開始--視覚障がい者の移動など支援

NO BUDGET

2020-11-16 10:49

 次世代移動支援技術開発コンソーシアムは、「AIスーツケース」の社会実装を目指した実証実験を開始した。期間は11月12日から2021年4月30日まで。日本点字図書館と日本盲導犬協会も実証実験に参画し、視覚障がい者の移動支援や技術的課題の解決に向けた知見を提供する。

AIスーツケースの構成要素
AIスーツケースの構成要素
 AIスーツケースはカメラをはじめとしたさまざまなセンサーから得られる情報と、人工知能(AI)やロボットといった最新技術を組み合わせることで、視覚障がい者が自立して街を移動し自然なコミュニケーションを開始することを助ける統合ソリューション。AIスーツケースのスーツケース部分は英Globe-Trotterのスーツケースを土台として吉本英樹氏がデザインした。

 同コンソーシアムは、アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本IBM、三菱自動車工業の5社で設立された。

 実証では搭載機能の性能や使いやすさを評価、検証することで共生社会の実現に向けた取り組みを進めていく。三井不動産が管理運営する商業施設コレド室町3(東京都中央区)をはじめ、国内の商業施設、公共交通機関、大学構内などへ拡大していく。

 AIスーツケースの移動を支援する基本機能は、位置情報と地図情報から目的地までの最適ルートを探索したり、音声や触覚などによる情報提示を交えながら誘導したりする機能、映像・センサーの情報から障害物を認識して避ける機能などがある。

 また位置情報とクラウド上の知識情報から、周囲の店舗の案内や買い物の支援を実現する音声対話機能や、映像から知人を認識して表情や行動などから相手の状況を判断し、円滑なコミュニケーションを支援する機能などもある。さらに、映像・センサーの情報から周囲の行動を認識し、「行列に並ぶ」といったその場に応じた社会的な行動を支援する機能も備えている。

 今回、商品タグのRFIDをスマートフォンで読み取らせることで手に取った商品の情報を音声で伝え、買い物を支援する機能も追加された。また、新型コロナウイルス感染症拡大への対応として、映像・センサーの情報から人とのソーシャルディスタンスを確保しながら誘導する機能も追加された。さらに映像からマスク着用有無を判定し音声と触覚(振動)で知らせることで、ユーザーの状況に応じた行動を支援したり、マスク着用時でも映像から知人を認識し、円滑なコミュニケーションを支援したりする機能も加えられている。

 実証実験期間における顔認識は、本人の了承と個人の顔データを含めた情報取得を認めている施設でのみ実施する。撮影した画像データはAIスーツケース技術の開発のみに利用し、実証実験後はデータを削除する。

 なお新たな協業として、慶應義塾大学と早稲田大学が賛助会員として参画し、AIスーツケースをプラットフォームとした研究活動を行うこととなった。

 今後はAIスーツケースのさらなる開発と、社会実装に向けた実証実験とデモンストレーションを実施していくとともに、視覚障がい者の実社会におけるアクセシビリティーと生活の質向上を目指す。

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