業務変更に追随--商品開発プロセスをシステムで標準化したカウネットの柔軟性 - (page 2)

石田仁志 藤代格 (編集部)

2021-03-10 07:00

“現場と一体”で使えるシステムを模索

 コクヨグループでは、2006年からドリーム・アーツ(渋谷区)のビジネスプロセス管理(BPM)型ウェブデータベース「SmartDB」を業務アプリケーション基盤として採用。さまざまな業務アプリケーションを開発し、アプリを活用できるグループウェア「INSUITE」とともに活用しているという。

 PB商品開発プロジェクトでは、当初ステーショナリー部門の仕組みのコピーを検討。しかし、「実際の自分たちの業務活用を考えると、変更したほうが利便性が高くなることが多く、いちから開発することにした」と、大竹氏は方針変更の経緯を説明。必要最小限の機能に絞るなど、新たなシステムの構築に至ったという。

 大竹氏が一人でシステムを企画、ある程度完成図を描いた段階で企画、開発の担当者へのプレゼンしたところ「物凄く反発された」(大竹氏)という。30人ほどが活用することとなる現場と一体になる必要性を再認識し、要望の多かった人など5~6人を現場から集めてチームを構成。議論を重ね、問題点を解決しながら進める形で再構築したという。

 2019年8月、コクヨグループの情報システム部門やそのパートナーと協力して「カウネットPB企画・開発管理DB」を開発。当初の構想から半年遅れるものの、現場の理解を得て稼働を開始している。

 PB企画・開発管理DBでは、プロジェクトのアイデア出しから企画、開発、完成、販売までの一連のステップの中で必要な情報を、データベース(DB)に都度入力できるように構築。10ほどあるそれぞれの段階でチェックポイントを設け、進捗状況や課題を可視化し、開発プロセスを標準化。従来のように一つひとつのファイルを開かなくても、状況を把握できるようにしたという。

追加開発、変更は1年半で3回--業務に沿った修正は“前提”

MD本部 商品開発部 有井氏
MD本部 商品開発部 有井氏

 現場で品質管理に携わるカウネット MD本部 商品開発部の有井宏氏は、完成したシステムを「当初はさほど使いやすいものではなかった」と振り返る。意図的に必要最低限の業務フローで構築したこともあり、運用の過程でさまざまな改善点が浮かび上がったという。

 導入した1年半で3回の追加開発を実施。1回目の追加では、承認のワークフロー機能を実装した。社内でのコミュニケーションを意識して敢えて対面と紙の仕組みを残したものの、2020年7月の本社移転に伴うフリーアドレス制の導入、新型コロナウイルス感染症の流行に伴うリモートワーク対応など、急遽の実装となったという。

 2回目は、運用の実態に合わせた修正を実施。全体フローを再整備、マニュアルも作り直し、入力の順番や必須項目をわかりやすくしたという。

 3回目では、特定のステップを踏まないと先に進めない制約ポイントを構築。想定外の使い方が発生していたため、ルールを遵守すべくガバナンスを効かせている。

 有井氏にとっては、これら追加開発は織り込み済みだったようだ。「システムを開発しても、業務自体のやり方が変わる時にシステムがついてきてくれないと使えないものになってしまう」。業務に合わせてすぐに変更できるというSmartDBを基盤にするメリットを説明する。

社内でのデジタル活用促進効果も

 システム導入の結果として現場の手間は増えたものの、抜け漏れのない業務プロセスを定義。根付いた一因に現場の開発への携わりがあると考えているようだ。品質確保のためには必要な改善だったため、大竹氏は「本来すべきだった管理がしっかりとできるようになった。やれていなかった分を含めると、管理工数のコスト削減効果は相当大きい」と話す。引き継ぎの業務効率化などにもつながり、「開発するPB商品数増も期待できる」(同氏)そうだ。

 また、業務改善基盤となる業務アプリケーションをSmartDB上に開発したため、「SmartDBが承認機能として活用できることを周りが見て、社内の我々の業務以外でも同じような活用が広がっている」(有井氏)。カウネット社内のデジタル活用促進にも効果があるという。

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