アクセンチュアとMujinが合弁会社設立--データ収集の“空白地帯”に挑む

大場みのり (編集部)

2024-01-26 08:07

 アクセンチュアと産業現場の自動化ソリューションを提供するMujinは1月25日、合弁会社「Accenture Alpha Automation」を設立したと発表し、記者会見を開催した。Accenture Alpha Automationは、製造/物流領域における現場のオペレーションデータと経営データを連携し、企業のデータ主導型経営と自動化・省人化を加速させる。

 両社は2019年に協業を開始。Accenture Alpha Automationへの出資比率は、アクセンチュアが7割、Mujinが3割となっている。

 アクセンチュアは、研究開発から製造・物流まで幅広い領域で企業のDXを支援するサービス「インダストリーX」を提供している。同サービスの顧客の大半はものづくりに携わる企業だが、彼らを取り巻く環境は厳しい。

 1980年代ごろは「良い物を低価格で作れば作るだけ売れた時代」、2000年代ごろは「良い物に付加価値を付ければ売れた時代」、そして2020年代以降は、労働人口の減少、運送コストの増加、地政学リスクによるサプライチェーンの分断などで「そもそも製造・運送することが困難な時代」とアクセンチュアは定義する。こうした状況を受けて、同社は「作る・運ぶ・売る」のプロセスを再構築することの必要性を認識しているという。

 アクセンチュアは、企業活動におけるさまざまなデータや機能を取得し、デジタルツインとして現実世界をデジタル空間に再現する「デジタルツインエンタープライズ」の実現を目指している。顧客は社内システムから自社のデータを収集できるが、製品の生産や運搬といった現実世界でのデータ収集には課題が残る。

 アクセンチュア 代表取締役社長の江川昌史氏は「(現実世界でのデータ収集は)オペレーショナルテクノロジー(OT)の世界でわれわれが普段扱っているITの世界とは異なるので、その分野に強みを持つプレーヤーと組む必要があると感じ、Mujinと協業関係を続けてきた」と説明した。

アクセンチュア 代表取締役社長の江川昌史氏
アクセンチュア 代表取締役社長の江川昌史氏

 Mujinについて、アクセンチュア 常務執行役員 インダストリーX本部 統括本部長の中藪竜也氏は「ロボットのハードウェアを開発・提供するだけでなく、その上にデータ、プラットフォーム、オペレーティングシステム(OS)といったコンセプトを持っているプレーヤー。現場と経営のデータをつなげる上で最も相性が良い相手ではないか」と評した。両社は双方の距離を一層近づける必要性を認識し、合弁会社の設立に至ったという。

 Mujinは2011年に創業し、世界拠点は4カ国、従業員数は350人以上。アクセンチュアのほか、アスクル、ファーストリテイリング、イオン、日本郵便と業務提携や協業を行ってきた。

 Mujinは、自社の知能ロボットで多品種小ロット、無人搬送車(AGV)で高い拡張性を実現する。通常のロボットは人が教えた動作を繰り返すことしかできないが、多くのセンサーが搭載されている同社の知能ロボットは柔軟な対応をすることで生産性の向上に寄与する。ソフトウェアの提供元が異なると担当者は接続に苦労してしまうが、同社は各センサーのソフトウェアも自社で開発し、「Mujinコントローラ」で統合制御できる体制を構築した(図1)。

図1:各ソフトウェアと連携するMujinコントローラ 図1:各ソフトウェアと連携するMujinコントローラ
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 企業の「研究開発」「生産計画・調達」「製造」「物流」「マーケティング・販売」というプロセスにおいて、Accenture Alpha Automationは製造/物流工程のデータ収集と現場の最適化を担う(図2)。アクセンチュアのメンバーが構想の策定、Mujinのメンバーがシステムの構築を主に担当する。

 製造/物流領域は、熟練した従業員の勘やコツなどの暗黙知で成立している傾向があり、個人での最適化は進んでも全社での生産性向上にはつながりにくい。両社はこの暗黙知を要素分解・デジタル化し、知能ロボットで再現。データがロボットからAIのプラットフォームに届き、分析を経て現場の生産性向上が可能になるという。企業全体や外部のデータも取り込むことができ、例えば世界中の店舗の売上データを基に製品を自動で供給することが期待される。

図2:Accenture Alpha Automationの役割 図2:Accenture Alpha Automationの役割
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