IBMが2004年に発表し、推進している「IBM Workplace」は、企業内に存在する、業務やコラボレーションのためのあらゆるシステムをフロントエンドで統合し、それぞれのユーザーの役割やニーズに合わせたデスクトップ環境を構築するための構想、および製品群の名称である。
グループウェアと呼ばれる製品カテゴリを市場に根付かせた「Lotus Notes/Domino」に加え、バックエンドの業務システムをフロントエンドで統合するための「WebSphere Portal」といった製品が、Workplace構想の実現にあたってのキープロダクトと位置づけられている。そのクライアント環境には、クライアント/サーバが主流の時代から今に至るまで多くのユーザーに使われ続けているNotesクライアントに加え、DominoテクノロジーやWebSphere Portalのフロントエンドとなるウェブブラウザ、そして、同社が新たな標準クライアント環境として推進する「Workplace Managed Client(WMC)」と呼ばれるリッチクライアントがある。
WMCは、同社がEclipse RCP(Rich Client Platform)をベースに構築した「Workplace Client Technology」に基づく「リッチクライアント」だ。WMC上では、Javaコンポーネントとして用意されたアプリケーションの各機能を組み合わせて、それぞれを連携させつつ利用することができる。また、その名前の示すとおり、クライアントの利用環境をサーバ側でコントロールできる点でのメリットも大きい。
IBMがWorkplace構想の中でリッチクライアントを提供する意義について、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)ソフトウェア事業ロータス事業推進部部長の吉田賢治郎氏は、扱いやすいユーザーインターフェースやエンタテインメント性の高いプレゼンテーションの提供といった点に加え、従来のクライアント/サーバアプリケーションとウェブアプリケーションの双方をクライアント環境で統合し、さらにその環境をサーバ側で一括して管理するための標準的な枠組みが用意されたことの重要性を強調する。
「すべてのアプリケーションのフロントエンドをウェブブラウザにしたいというニーズもたしかにある。ただ、多くの場合、操作性の問題などから、特定のアプリケーションのクライアントソフトは残ってしまい、エンドユーザーはその両方を使い分けなければならないという状況も起こっている。ウェブアプリケーションも、クライアント/サーバ型のアプリケーションも、一括して管理できるフロントエンドを指向すると、たどり着くのがWMCのような形のリッチクライアントになる」(吉田氏)