いまや飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しているSalesforce.com。従来のCRMオンデマンドサービスのリーダー企業から、オンデマンドビジネスサービスの市場およびテクノロジのリーダー企業へと変革をなしたと自負する。そのSalesforce.comの創業者であり、会長 兼 最高経営責任者(CEO)を務めるMarc Benioff氏が来日し、セールスフォース・ドットコム主催のイベント「Success On Demand Tour 2006 Summer」にて、「The Future of Software 〜ソフトウェアの未来〜」と題した基調講演を行った。
冒頭、Benioff氏は、Microsoft 会長 Bill Gates氏の「数十から数億単位の顧客を前提に設計されたサービスが、あらゆる規模の企業に提供するソリューションの本質とコストを劇的に変化させる」というコメントを引用し、転換期を迎えているソフトウェアの将来について語り始めた。
「Gates氏は、従来のソフトウェア技術やビジネスモデルが、すでに変化しつつあることに気づいている。つまり、Microsoftは、ソフトウェアの世界が急激に変化していることに気がついているのだ」(Benioff氏)
これは、従来型のCDに焼いて配るというソフトウェア業界のビジネスモデルが、たくさんのユーザーに対してインターネット経由でサービスを提供する形へと、大きく変化しているということ。旧来型の事業展開で成功を収めているMicrosoftでさえ、この変化にすでに気づいているというのだ。
ebayやYahoo、Googleといったコンシューマー向けのサービスが、ここ10年間の間で世界を大きく変え、そこから新しい技術が次々と生まれている。ビジネスウェブにおいても、このコンシューマーウェブの流れに追随し、さまざまなアプリケーションを統合してどこにでもそれを届けられるようにしなければならないとBenioff氏はいう。
「サンフランシスコにあるサンフィルロード沿いには、たくさんのベンチャーキャピタルが集まっている。現在彼らは、ソフトウェアの企業にはほとんど投資しておらず、サービスを提供する企業に投資しているのだ。これだけでも、将来性がどちらにあるかは容易に予測できる」(Benioff氏)
この新しいソフトウェアサービスの提供形態を、「マルチテナント方式」とBenioff氏は説明する。リソースを共有することでコストを下げ、提供するソフトウェアの能力をも高めることができる。コンシューマーウェブがすでにこれを証明済みであり、成功している企業はどこもこのマルチテナント方式だ。このマルチテナント方式が、ビジネスソフトウェアの未来を担う。これがソフトウェアの未来像の最初の項目だ、とBenioff氏は説明する。