「MicrosoftやSAPはシングルテナント型で、一軒家をすべて自分で管理するようなもの。一方のSalesforce.comはマルチテナント型で、マンションのように管理は管理会社に任せ、共有施設は住人全員が利用できる」--こう話すのは、Salesforce.comのプレジデント、Jim Steele氏だ。来日中の同氏は10月3日、記者会見にて競合企業に対するSalesforce.comの強みを説明した。
Salesforce.comでは、2007年度の売上予測を、2006年度の3億9000万ドルより約60%増の4憶9500万ドルとしている。ユーザー数と導入社数も右肩上がりを続けており、7月31日時点でのユーザー数は50万1000人。順調に成長が続いている理由についてSteele氏は、「Salesforceはソフトウェアの複雑さを排除した“サービス”だからだ。一般消費者向けのサービスのように、簡単に誰もが使えるビジネスサービスとして提供したことが成功の理由のひとつ」としている。
また、Salesforce.comは新規バージョンを年に約3回という頻度でリリースしているが、「これは他社の3〜5倍の速さ」とSteele氏。同氏は、「他社は18カ月から24カ月かけて新バージョンをリリースし、しかも約2年かけてやっと半数のユーザーが新バージョンを導入するというケースがほとんどだ」と指摘、Salesforceはリリース頻度が高いのみならず、新機能を誰もがすぐに利用できる環境にあることも強みだとしている。
Steele氏はさらに、MicrosoftがCRM製品の「Microsoft Dynamics」を2007年にオンデマンド化するとしていることについて触れ、「1年以上先のことを今言うなんておかしい。ソフトウェアをCDとして売る企業とはDNAが違う。オンデマンドの世界は今日が勝負なんだ。Googleも1年後にこのサービスをリリースするなどということは言わない。Microsoftはこの業界をフリーズさせ、顧客の決断を遅らせたいのだ」と批判した。
Steele氏は、Gartnerが2010年にはすべてのソフトウェアの30%はオンデマンド型になると予測していることから、「この市場はこれからも大きく成長する」と話す。その中でブランド価値も確立しつつある同社についてSteele氏は、「Microsoftがクライアント・サーバの世界で市場を独占したように、オンデマンドの世界ではSalesforceが市場をリードする」と強気な姿勢を見せた。