前回(作戦成功の裏には「インテリジェンス」あり--その大切さを国家レベルで考えてみる)は、インテリジェンスが、国家戦略や作戦計画の立案、あるいは実現のために必要であることを理解した。
インテリジェンスの本質は「判断、行動するために必要な知識」であるということだ。ではインテリジェンスの前に「ビジネス」がついた「ビジネスインテリジェンス(BI)」とは何だろうか。基本的なことから見てみよう。
「意思決定の質」を分析するBI
BIという言葉を発明したのは、Howard Dresnerという人物だ。1989年に同氏が、企業が業績を改善するために意思決定の質を分析する概念として、初めてこの言葉を用いたとされる。当時、同氏はGartner Groupのアナリストだった(現在はバイスプレジデントでガートナーフェローでもある)。こうした経緯をふまえ、現在でもBIは、次のように定義されていることが多い。
米バブソン大学のThomas H. Davenport教授は、著書「分析力を武器とする企業--強さを支える新しい戦略の科学」(日経BP社刊)で、BIについて「データに基づいてビジネスの実態や業績を把握し、分析するための技術やプロセスの集合」であると解説している。
さらに、BIは大きく「調査・報告」と「分析」の2つの要素からなり、「データを収集して報告する段階」から「何が起きるかを予測する段階」「ビジネスの実行や意思決定を最適化させる段階」へと高度化していくと解説している。
組織の内外からデータを集め、分析して、そこで得た結果を競争優位につなげること。それがBIに取り組むことの価値と言えそうだ。データ分析は、BIの1つ下位の概念であり、BIにおける重要なプロセスの1つだ。
企業はいまや、基幹業務システム(ERP)やPOSシステム、あるいはウェブサイトなど、数多くのシステムから事実に基づくデータを大量に集めることができる。ほとんどの企業が、蓄えた大量のデータを分析して事業の成功に結び付けたいと考える。しかし、同教授は、分析力を武器とする企業は「ほんのひと握り」しかないと指摘する。それはなぜだろうか。
分析力を武器にする企業には4つの特徴があるという。1つは、「分析力が戦略上の強みのベースになっている」こと。2つめは、「組織を挙げて分析に取り組んでいる」こと。3つめは、「経営幹部が分析力の活用に熱心である」こと。そして4つめが、「分析力に社運を賭け戦略の中心に据えている」こと。これらの特徴は、同時に成功要因にもなっており、中でも「経営幹部の熱意」が一番重要なのだそうだ。