(前編はこちらです)
費目別計算により製造原価を3つに区分
最初のステップである費目別計算では、発生した製造原価を、大きく材料費、労務費、経費の3つに区分することになる。また、その費用が、各プロジェクトまたは製品に直接紐付けられるものなのか、そうではなくて複数のプロジェクトにまたがって発生するものなのかで、直接費と間接費に区分する。これらの組み合わせにより製造原価は、直接材料費・直接労務費・直接経費・間接材料費・間接労務費・間接経費――の6つに分類されることになるが、間接材料費・間接労務費・間接経費はまとめて製造間接費として取り扱われる。
ここで、ソフトウェアを開発する場合に重要な費目としては、社内の開発者の人件費である労務費の計算であろう。よって、費目別計算のうち今回は労務費に絞って、実務上のポイントをまとめる。
労務費の金額については、「労務費単価×作業時間」で算出されるため、原価計算を正確に実施しプロジェクト管理を進めていくためには、労務費単価の設定と作業時間の区分が重要になる。
労務費単価については、分母を就業時間つまり勤務時間から休憩時間を除いた時間の合計、分子を人件費関連の費用を集計して算出する。そして、その労務費単価をプロジェクトに直接要した直接作業時間に乗じて直接労務費を算出する。
直接労務費は、特定の開発プロジェクトの直接費として、プロジェクトに直接集計される。一方、手待ち時間や部門ミーティングなどの間接作業時間については、労務費単価を乗じて間接労務費として製造間接費にいったん集められ、直接作業時間割合など一定の計算方法で最終的にはプロジェクトの製造原価として配賦されることになる。
部門別計算で製造間接費単価を求める
個別原価計算の次のステップ、つまり部門別計算について説明していきたい。部門別計算を行う理由は、製造間接費を、より正確に各プロジェクトに配賦するためである。そのために製造間接費を一度各部門に集計し、部門ごとの製造間接費配賦率(製造間接費単価)を求めることになる。その際、各部門の製造間接費の計算にあたっては、(1)部門個別費と(2)部門共通費配賦額の両方を集計が必要になる。
(1)の部門個別費とは、特定の部門に紐付けて把握することができる費用であるのに対し、(2)の部門共通費とは、複数の部門で発生する費用を意味する。これらは、人数や面積など、適切な基準で各部門に配賦されることになるが、この際の配賦基準の設定も、原価計算の精度を高めるための重要なポイントとなる。
これらを合わせて部門別に製造間接費を集計し、直接作業時間などを配賦基準にして製造間接費配賦率(製造間接費単価)を設定する。部門別計算によって、より正確な原価計算が可能になるが、このような部門別計算を実施せず、全社でひとつの製造間接費配賦率(製造間接費単価)を使用する方法も許容されている。これは、部門数の数が少ない小規模の企業や、部門間における製造間接費配賦率のバラつきが少ない企業に適した方法と言えるだろう。
製品別計算でプロジェクト原価を集計
個別原価計算での最後のステップが製品別計算、すなわち各プロジェクトや製品の製造原価を集計する段階である。
直接費については、各プロジェクトに直接賦課し、間接費については、部門別計算を実施する場合にはいったん部門に集計した後に、直接作業時間などの配賦基準を用いて各プロジェクトに配賦する。開発プロジェクト別の製造原価と受注額を比較することで、プロジェクト別の粗利すなわち売上総利益が算定されるが、ここでは販売費や間接部門費などの販売費・一般管理費が含まれていないことに留意したい。このように、原価計算基準での費用集計は製造原価のみであるため、最低限必要な制度上の原価計算を行ったうえで、経営管理上、必要な情報を加えて管理会計上も有意義なプロジェクト管理体制を構築していく必要がある。