HPCシステムの構成を決めるために欠かせないベンチマーク環境
衝突・落下・流体・構造などの解析や映像レンダリング、AI、金融、ライフサイエンス、気象などのさまざまな分野において、より多量かつ短時間での計算が求められるHPC。デル・テクノロジーズは、90年代後半に初代のCAE(Computer Aided Engineering)解析クラスタを提供して以来、20年以上もの実績を積み重ねてきた。
デル・テクノロジーズ株式会社
DCWソリューション本部
HPCビジネス開発マネージャー
山崎 拓也 氏
「2003年くらいまではUNIXが全盛でしたが、現在は汎用・オープンシステムが主流です。デル・テクノロジーズは汎用PCサーバーを使ったHPCクラスタに長らく取り組んできました。2015年には『HPC & AI Innovation Lab』を設立し、大型HPC案件のための人材を強化しながらベンチマーク環境の拡充を進めてまいりました。そしてそのシステムが2017年には世界のスーパーコンピューターランキングTOP500にランクインしています」と語るのは、デル・テクノロジーズDCWソリューション本部 HPCビジネス開発マネージャーの山崎 拓也 氏だ。同氏は、人材強化の方針のもと2017年に入社したHPCのスペシャリストである。
山崎氏の入社後もスーパーコンピューターなどHPCの専門家を集め、日本国内においても東京大学物性研究所が導入した1,680ノードをはじめ、学術系や製造業などに数百ノードクラスの実績を数多く積み重ねている。これは、充実した研究施設とベンチマークができる人材など、HPCのスペシャリストを次々と採用した賜物だ。山崎氏によると、国内のHPCビジネスは成長を続けており、2020年にはコロナ禍の影響による投資停滞もあったが、現在は回復傾向にあるという。
スパコンは専用/独自仕様から汎用/オープンへ変化してきている
東京大学や京都大学などの学術研究や官公庁系の実績
デル・テクノロジーズの国内でのHPC案件の実績について、まずは大学や官公庁系などの入札案件をみてみよう。この分野のキーマンは、2018年に入社した DCWソリューション本部 HPCビジネス開発マネージャーの鈴木 幸朗 氏だ。
デル・テクノロジーズ株式会社
DCWソリューション本部
HPCビジネス開発マネージャー
鈴木 幸朗 氏
「プリセールスでは、ユーザープログラムやアプリケーションのベンチマークテストを実施するHPCエンジニアとして活動しています。お客様が仕様を策定するための事前調査、入札時の性能評価試験、導入決定後のシステム検収試験など、すべてのベンチマークを担当しています。ポストセールスでは、導入システムの利用の手引きの作成や利用者講習、ユーザーからの質問対応などをしています。他にも、社内向けのHPCトレーニングも担当することがあります」(鈴木氏)
デルが大規模案件を手掛けるようになったのは、鈴木氏のようにスパコンベンダーで経験をもったエンジニアが揃ってきたからだ。顧客にも顔が利き、顧客の要求要件を的確に理解できる専門家を採用することで、デルのHPCに対する信頼感が高まっている。各国のエンジニアにも協力をもらいながら、ベンチマークテストを実施出来る体制もある。
2020年10月に全面稼働した東京大学物性研究所(The Institute for Solid State Physics)のOhtakaシステムは、鈴木氏が導入に携わった案件だ。2020年の11月の時点で、TOP500中 87位で、国内では16位となった。
鈴木氏は、「システムリソースをなるべく大量に欲しいという要求もあり、何度も構成を見直して最大ノード数を提案しました。おそらく、どの会社よりも多いノード数を提案できたと思います」とシステム導入の経緯について説明した。
京都大学基礎物理学研究所(Yukawa-21 – Yukawa Institute for Theoretical Physics)へはインテルのCPUを搭載したシステムを提案し、野心的な試みを実現させた。
全国の理論物理学研究者に公開しているYukawa-21システム
「通常、大規模システムは2ソケットサーバーが主流なのですが、1ノードで使えるCPUを多くしたいため、4ソケットサーバーを提案しました。また、サーバーを相互に接続するインターコネクトには、デル・テクノロジーズの400Gbit/sのEthernetスイッチを提案しました。Ethernetのネットワークというのは、クラウドのシステムなどで多く見られるもので、学術系では比較的珍しい構成です。TCP/IPプロトコルスタックのオーバーヘッドを回避するRoCE(RDMA over Converged Ethernet)を用い、ベンチマークでも十分な性能が得られることを確認し、お客様にもご満足いただいています」(鈴木氏)と語った。
提案にあたっては、顧客のニーズをくみ取り、社内で検討を重ねたうえでどんな構成にするのかを決定する。顧客からの多種多様な要求・要件をどのように満たすのか、入札案件の経験を積み重ねていなければ、大規模なHPCの提案は成し得ない。
民間企業案件の鍵は、ISVアプリとCPU性能を熟知すること
続いて民間企業案件の実績についてみていこう。この分野では、2019年入社のDCWソリューション本部 HPCビジネス開発マネージャーである梅岡 星児 氏がチームを引っ張っている。民間企業案件が学術・官公庁案件と異なるのは、前者が主に顧客のプログラムを性能評価に使うのに対して、後者は市販のISV(Independent Software Vendor)アプリケーションを使うところだ。梅岡氏は、ISVのスペシャリストとして、必要なシステムのベンチマークや営業の支援などを行っている。
解析分野ごとにISVは異なり、ハードウェア構成も変化する
デル・テクノロジーズ株式会社
DCWソリューション本部
HPCビジネス開発マネージャー
梅岡 星児氏
「自動車の衝突解析のためのISVアプリケーション、例えば『LS-DYNA』などは、スケーラビリティが高く、CPUクロックが高く、メモリ帯域は中規模が向いている傾向があります。そこでお客様の要望を聞き、HPC & AI Innovation Labを活用して、適切なシステム構成を選ぶためのベンチマークを行います。市販の主なISVアプリケーションを常時整備し、すぐに検証できる点も私たちの強みです」(梅岡氏)
梅岡氏によると、民間企業のHPCに対するニーズは、「処理時間を短縮する」ものと「処理性能を高める」ものの2種類の傾向に分かれるという。例えば、100秒かかっていた処理を80秒、60秒に縮めたいというニーズもあれば、100秒のままでいいからその処理を並列で100本処理したいといったニーズもある。しかし多くのISVは有償アプリケーションであるため性能アップにはジレンマがある。ライセンス費用がCPUコア数に対して課金されるため、前者は単一のコア性能が高いプロセッサーを選び、後者はISVのライセンスを増やすか、オープンソースのアプリケーションを使うかして処理性能を高めていく。
梅岡氏は、「インテルのプロセッサーで最近発表されたIce Lakeと呼ばれる世代は、クロック自体は下がっています。クロックに依存していたISVアプリケーションの場合、前世代のCascade Lakeも候補として考えなければなりません。私たちは検証環境を最大限に活用し、あらゆる可能性を考慮してお客様にとって最適な提案をさせていただきます」と語った。
長年HPCに携わりノウハウを蓄積したスペシャリスト、そして充実したベンチマーク環境。この2つが揃ってはじめて、目的に応じたHPCシステムを構成できるということだ。
学術・公共案件、民間企業向け案件ともに、国内では各分野に精通した経験豊富なスペシャリストが揃い、グローバルではHPC & AI Innovation Labなどの設備やハイスキル人材を通じて最適なシステム構成のベンチマークができるデル・テクノロジーズ。http://HPCatDell.comには詳細資料を用意しているので、ぜひ参照してほしい。
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