ビジネス環境の変化にデジタルとクラウド活用で立ち向かうビジネス環境の変化にデジタルとクラウド活用で立ち向かう
ネスレ日本 IT担当者の果たす役割とは

今やデジタルは、あらゆる新規ビジネスにとって無視できない要素であり、ビジネスを円滑にデジタル化する上で欠かせないのが、クラウドの持つ迅速性と柔軟性だ。先進企業は、デジタル化にどう向かい、クラウドをどう活用しているのだろうか。IT担当者は、その中でどのような役割を果たしているのだろうか。本記事では、昨年のAWS Summit 2018での事例発表が話題を呼んだネスレ日本に話を伺った。

企業を取り巻くビジネス環境の変化と、デジタル化の潮流

 企業活動のあらゆる領域でデジタル化が課題になっている。今や人々はデジタル接点と現実との垣根を意識することなく、両者が混じり合った世界を生きているからだ。特に新規ビジネスの領域ではその傾向は顕著であり、ビジネスとテクノロジーは切っても切り離せない関係にある。

 デジタルビジネスが得意とする領域では、商品・サービスのあり方が明確に固まっておらず、市場のニーズは急激に変化する。IT担当者の視点からは、市場の変化に対応して、迅速かつ柔軟に変化できるシステムが望ましい。デジタルビジネスとクラウドの相性が良いと言われるのは、そのような理由からだ。

 多くの企業がデジタル化とクラウド活用の必要性を認識する一方で、実際に着手した企業は、年々増加しているとはいえ依然少数派だ。実際にクラウドを活用してデジタルビジネスに挑む企業は、どのような取り組みを行っているのだろうか。ネスレ日本の事例から探ってみよう。

ネスレ日本の挑戦

 ネスレ日本が直面していたビジネス課題の一つが、主力事業であるコーヒーを飲む環境の変化だった。核家族化によって、コーヒーを飲む機会は、家族団らんの場からカフェやオフィスなど家の外へ移っていった。それに対する答えが、「ネスカフェ アンバサダー」に代表される、コーヒーマシンのレンタルを軸にしたビジネスだ。オフィスなどにコーヒーマシンを無料で貸し出し、コーヒーを定期購入してもらう仕組みは、日本の企業文化ともマッチし大成功を収めた。その経験を踏まえて、一人ひとりに健康習慣を提案する「ネスレ ウェルネス アンバサダー」など、新しい取り組みへの挑戦も始まっている。

 さらに、小売業界共通の課題として、物流コストの増加が問題になっている。そこでネスレ日本が始めた取り組みが、地域の拠点をハブとしてエンドユーザーに新たな配送の形を提案するMACHI ECO便だ。お店や家が地域のハブとなり、商品を買うエンドユーザーはそこにモノを取りに来る。配送場所を一つにすれば配送業者が各家を回る必要もなくなる。さらにハブを拠点として、同じ地域の人と人がつながり、世代の枠をこえた地域のコミュニティも生まれる。単にコストを削減するだけでなく、イノベーションを起こす取り組みを重視している現れだ。

 これらの新施策を実施するためには、デジタル、特にECの活用は欠かせない。しかも、アンバサダーなどユニークな仕組みを実装することは、既成のECプラットフォームでは難しく、独自のカスタマイズが必要になる。即ち、自社システムこそがビジネスの成否の鍵を握っている。ネスレ日本は、2020年度にECの売り上げを全体の20%にまで伸ばすという目標を掲げている。ビジネスに占めるデジタルの比重がますます高まる中、IT担当者はどのような役割を果たしているのだろうか。

クラウド活用の背景と取り組み

 「新しい技術を用いてどのようにイノベーションを起こすか。そして変化に対応しながら、デジタル起点の売り上げをどう拡大していくかが課題です」――そう話すのは、ネスレ日本 Eコマース本部の日比裕介氏だ。日比氏のチームは、主にECプラットフォームなど、顧客接点に関連するシステムの構築・運用を行っている。ここでネックになっていたのが、オンプレミス環境のスピード感だった。デジタルビジネスでは、ビジネスの変化にシステム面でも迅速に対応していく必要がある。ウォーターフォール型で半年から一年を費やして設計を固め、作っていたら、その頃にはビジネスで求められる要件が変わってしまう。アジャイルにシステム導入を進めるためには、インフラについてもスピード感が重要になってくる。

ネスレ日本 Eコマース本部の日比裕介氏
ネスレ日本 Eコマース本部の日比裕介氏

 「システム構築にあたっては、グローバルのIT部門が管理しているオンプレミス環境を用いるのが原則です。しかし、全社のITを一手に管理しているため、どうしても迅速な対応とは言えません。またアンバサダーの仕組みなど、日本特有のビジネス要求を満たすには、グローバル共通のプラットフォームでは不十分な面もありました」と日比氏は話す。

 そこで日比氏のチームは、ECの稼働環境をオンプレミスからAmazon Web Services(AWS)に移行した。クラウドにしたことで、それまではリクエストしてから反映されるまで数日かかっていた作業を、自分たちの手で数時間内に終えられるようになった。また、グローバルのオンプレミス環境ではシステムの技術的な詳細が見えにくかったが、クラウド移行によって自分たちの手で環境を構築しているため、緊急時の問題やビジネス課題に対応しても、柔軟にシステムの変更ができるようになった。クラウド化によって得られたスピードと柔軟性こそが、移行の最大のメリットだと日比氏は語る。

 自由度が上がったということは、一方でそれだけ自身の作業工数が増えるということも意味する。ネスレ日本の場合、日比氏も含め4人という少人数のチームで、新規のシステム導入だけでなく既存のシステムの運用も行っていた。そのため、運用に掛かる負荷の削減が大きな課題となっていた。そこでネスレ日本が選んだのが、日本サード・パーティが提供するクラウド運用代行サービス「Kyrios」だ。緊急時の対応などに必要なコア業務を残し、残りの運用業務を外部に委託することで、イノベーションに必要な新規システムへリソースを割くことができる。

クラウド化の次に描くシステム像

 それではネスレ日本が、クラウド移行の次のステップとして描くシステムの展望はどのようなものだろうか。

 「今後の展望としては、先ほどの日本サード・パーティとも協業しながら、運用の自動化を進めていきます。まずはセキュリティパッチ適用の自動化からですね。今後はサーバレスも活用しながら、運用の負荷をどんどん下げていきたいと考えています。コンテナの導入やマイクロサービス化についても、アプリケーションのどの部分に導入するのが最適か検証している段階です」と日比氏は語る。

 さらにプラットフォーム全体の展望としては、ネスレのグローバルのIT部門でも、クラウド活用に向けて大きく動き出しつつあると日比氏は付け加えた。その状況に対応するためには、現在日本で利用しているAWSだけでなく、他のクラウドやオンプレミスも包括したマルチクラウド・マルチプラットフォーム化も視野に入れる必要が出てくる。その中で運用も含めたシステムの最適解を模索することが今後の課題だ。

 最後に日比氏へ、デジタル変革を前にして、本格的なクラウド活用に挑もうとしているIT担当者へのアドバイスをお願いした。

 「従来のシステム構築時には、データセンターを決めて、ハードウェアを納品して、ネットワークを作って、といった具合に煩雑な作業が必要でしたが、クラウドではそういった作業が不要になります。まずは簡単に始められるように、小さなシステムからクラウド化すること。そして、実際に作業しながら、オンプレミスとの違いやクラウドのスピード感を感じること。そのうえで、自社のどのシステムに適用するのかベストかを検討するアプローチが良いでしょう」

提供:ネスレ日本株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2019年12月31日
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