Azure Stack HCI・Azure Virtual Desktopによる安全・安心な業務基盤が働き方を変える

 社会・ビジネス活動のデジタル化が進んでいる。医療や自治体といった領域でも、生産性とサービス品質の向上、働き方改革といった目的のため、これまでの保守的な取り組みからの脱却が必要となっている。

 一方、社会を支える医療・自治体といった領域では、常に安全・安心が求められる。オンプレミスシステムを閉じたネットワークで運用すれば、システムの安全性は高まると考えられてきた。

 しかし、システム管理の人員不足とリスクマネジメント体制の低下が慢性化するなかで、システム運用の効率性や働き方改革や多拠点運用といった課題を解決するのは容易ではない。セキュアな環境も、システム管理力が不足していては維持するのが難しい。

 そこで注目したいのが、Azure Stack HCIやAzure Virtual Desktopなどのテクノロジーによる、クラウド+オンプレミス環境のシームレスな統合だ。アプリケーションとデータ管理やリモートアクセスなどにおいて、安全性と優れたパフォーマンス・管理のしやすさを実現できるだろう。

 この記事では、自治体・医療分野での豊富な知見と実績を持つアルファテック・ソリューションズと、Microsoftのエキスパートとの対談をお届けする。

 アルファテック・ソリューションズ(以下、アルファテック)は、IT領域で50年以上の実績を持つ老舗のITサービスベンダーだ。三菱ケミカルのグループ企業となっており7万人規模のグループIT部門役も担っている。その知見と実績を、自治体や医療を始めとする多くの企業・団体に提供している。

 ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)を始めとするクラウドとオンプレミス環境のシームレスな統合が、自治体と医療領域を中心にどのような効果を発揮するのか具体的に解説する。デル・テクノロジーズの協力のもとで実施したAzure Stack HCIの検証についても紹介する。

オンプレミス指向の医療機関システム

本日は、よろしくお願いします。皆さんは、一緒にお仕事することもあるんですか。

Microsoft高添氏:この半年くらい、密にやり取りさせて頂いていますね。

アルファテック加賀美氏:以前はリモートミーティングなどに同席するだけでしたが、デルさんの大手町にある検証ラボに行ってご挨拶させていただきました。

アルファテック内山氏:私は、もっぱら高添さんの解説記事や講演を聞く側だったんですが、今回の検証で関わらせて頂いて大変光栄に思っています。

高添氏:恐縮しちゃいますね。

少しずつリアルでもお会いする機会が増えてきているんですね。早速ですが、今回のテーマである医療と自治体におけるITシステムの課題から教えて頂けないでしょうか。

加賀美氏:20年くらい前まで医療機関では、電子カルテとか画像診断など2-3のITシステムしかありませんでした。しかしここ最近では、20-30くらいのシステムがひとつの病院内に散在するようになっています。オンプレミスが中心で、物理的に環境を分けて閉じたネットワークのなかで運用するのが主流になっています。導入時期もバージョンもバラバラになっている状況ですが、ひとつでもうまく動かないと医療サービスが止まってしまうので、安定したシステム運用が重視されてきています。

アルファテック・ソリューションズ 社会公共サービス事業部 ヘルスケアサービスグループ 加賀美 利宗 氏
アルファテック・ソリューションズ
社会公共サービス事業部
ヘルスケアサービスグループ
加賀美 利宗 氏

高添氏:命に関わるすごい世界での仕事ですよね。そこでは、クラウドとか各省庁などの動きを、どのように受け止めているのですか?

加賀美氏:クラウドには、非常に前向きなエネルギーを感じています。ITに関して相変わらずの人手不足で、運用を外部に委託したいという強いニーズも感じています。その手段のひとつがクラウドで、病院のITの現場でも概念として浸透しつつあります。

 ただクラウドの検証はなかなか難しくて、クラウドに持っていきたいというアイデアはあっても、実際にアプリケーションがちゃんと動くのか、人員を含めたオペレーションがきちんと回るのか、確認は容易ではありません。

 また、徳島県の病院でランサムウェアの被害が出て、病院経営者はクラウドに一気に後ろ向きになってしまった印象もあります。

高添氏:そこに対しては、具体的な解決策を分かりやすく伝えていく必要がありますね。

加賀美氏:病院向けのアプリケーションを開発している会社さんは、コスト削減や競争力向上を求めています。そのためオンプレでシステムを1つ1つ作るのではなく、病院向けアプリケーションをクラウドに載せて、サービスを展開してゆく風潮は感じています。この動きは数年でますます加速してゆくと思っています。

自治体では三層分離の見直しとクラウドシフトの検討が始まったばかり

高添氏:自治体などの公共領域では、どうでしょうか。

内山氏:自治体のITシステムも、総務省が掲げるいわゆる三層分離、閉じたネットワークによって守られてきました。政府がクラウド・バイ・デフォルト原則を掲げたり、ISMAPの制定、ガバメントクラウドが提供されたりして、これまでのオンプレミス優先からクラウドをいかに利用するかにシフトしている真っ最中だと思います。

 当社では、Microsoft 365を中心にサービスを導入させて頂いています。今このようなお話が非常に増えていますが、クラウドではMicrosoft 365に限らず利用できるサービスが爆発的に増えて選択肢も増えます。三層分離も柔軟な考え方に変わりつつあります。

高添氏:デジタル庁さんが進める「パブリッククラウドの最新技術を活用しようじゃないか」という働きかけと、他の所管の各省庁、実際にITを利用する自治体で必ずしも足並みがそろっていないような印象があるという言葉もよく聞きます。現場の方はどう受け止めてるんでしょうか。

内山氏:現場でも、それぞれの所管省庁との関係のなかで、いろいろな意見が出ているところだと思いますし、まだまだ制約が多い部分もあります。ただ、制約のなかでこういう方法があります、こういう方法もありますと、さまざまな選択肢を提案することで従来よりも最新技術の導入に柔軟に受け止めて頂けていると感じています。

働き方改革のシステム環境を整えたい

高添氏:あと働き方改革といったキーワードもありますよね。医療も自治体も、なかなかリモートでは働きにくい現場だという印象があります。

加賀美氏:医療機関では2024年4月から改正医療法が適用されるので、現時点ではそれに向けて情報収集という状態です。ただ他の産業と比較すると、医療機関の中のネットワークはかなり閉じているので、システム上の大きな課題があるんじゃないかなと思います。

 また医療現場では医師や看護スタッフの人手が足りていませんので、限られた人員の中でローテーションを組んでいます。 いざ働き方改革が始まって労働時間の制限がかかっても、急には働き手が増えないため、緊急時に自宅からリモートでアクセスするといった、外から中へのアクセスが増えていくと私は思っています。ただ医療機関のネットワークは外から中に入るようには設計されていないので、見直しや再設計が進んでいくのではないでしょうか。

内山氏:自治体も、医療機関とよく似たところがあります。総務省から自治体デジタルトランスフォーメーションの推進(自治体DXの推進)方針が出されまして、各自治体の中でどう実現するのか議論しているところだと考えています。

 一方で、自治体の実際の業務では住民サービスがかなりの割合を占めていますので、職員のリモートワークというアプローチだけではなく、クラウドやWebを活用して住民サービスの利便性を高め、住民に対するオンライン行政の提供も併せることで、働き方改革につながっていくのかなと考えています。

Azure Stack HCIはオンプレミス指向をどのように変えていくのか

これまではクラウドかオンプレミスかの2者択一が求められていたように思います。医療や自治体のようにクラウドでは制約があると、オンプレ一択になってしまう。そういった課題に、現在のクラウドはどのような解決策を用意しているのでしょうか。

高添氏:今お二人からお話があったみたいに、課題が色々あるということは理解しています。Microsoftとしては、まずはパブリッククラウドの充実を図っていくことがファーストプライオリティになります。

 先ほど内山さんから話があったMicrosoft 365はもちろんそうですし、SaaSでそのまま使えば済むというのが1番効率的ではあるので。医療でも自治体でもSaaSを活用していくという動きが増えてくると思います。

 一方で、どうしても業務に最適化されたアプリケーションを作らないといけない場面も出てきます。こちらは、できるだけAzureや Power Platformなどの部品を提供して、その部品を使って最新の技術で簡単に業務アプリケーションを作っていただくという動きをしています。

加賀美氏:Microsoftならではの特徴は、どんなところでしょうか。

高添氏:提供しているサービスの幅の広さと、やはりハイブリッドクラウドでしょうか。我々はWindows Serverなどの製品を持っていて、元々オンプレミスのビジネス基盤がありました。クラウドだけで全てカバーできるとは最初から思っていないんです。

 パブリッククラウドにも利点はありますが、システムを社外に置くことができないとか、レイテンシの制約があるようなシステムを受け止められるように、組織の中に配置できる新しいシステム基盤をようやく提供できるようになりました。

それが、サーバーや仮想ストレージ・運用管理ツールなどを検証済みのアプライアンス製品としてまとめあげたAzure Stack HCIなんですね。

Azure Stack HCIの本当の姿を知るために検証を開始

高添氏:あらためて伺いたいのですが、アルファテックでAzure Stack HCIを検証したのは、何かキッカケがあったんですか。

加賀美氏:私が一番に注目したのはコスト面でした。世の中には、いろんな種類のHCIがあって、ここ数年で我々もいろんなベンダーのHCIを扱ってきました。そのなかで Microsoftの製品構成だとライセンスコストが劇的に下がるんですよね。ユーザーにとっても、大きな魅力になります。

 一方で、これまで我々が医療機関さんに納入させて頂いていたWindows Server による HCIは、ハイブリッドITとしての機能をフルに活かした姿ではないっていうことを1年ぐらい前に知りました。

 これだけ評判の良いソリューションにまだ見ぬ機能があるのであれば、ぜひそこを検証して、本当に使い物になるのか、管理面で使いやすいのか確かめたいと思いました。そこで具体的な検証を自治体向けの技術者である内山に依頼しました。

高添氏:内山さんのほうでは、どのような検証をおこなったんですか。

内山氏:私は技術者なので、まずは新しい技術を触ってみたいというのがありました。

 これまでHyper-VやStorage Space Directの機能を拡張するような形で、非常にスムースに必要な構成を作ることができましたが、Azure Stack HCIでも同じようにできるのか。

アルファテック・ソリューションズ 社会公共サービス事業部 自治体サービスグループ 内山 創一朗 氏
アルファテック・ソリューションズ
社会公共サービス事業部
自治体サービスグループ
内山 創一朗 氏

 もう1つは、Azure Stack HCIをハイブリッド構成にした時に、望むような構成が作れるのかという観点ですね。オンプレミスとクラウドを連携してサーバーを作るとか、クラウド側と監視やバックアップを連携するという魅力的な機能があるので、そういった動作がスムースにできるか確かめてみました。

 あとはリモートデスクトップ環境ですね。これまでは、サーバーOSにマルチセッションでログインできる環境の構築が多かったのですが、クラウドVDIのAzure Virtual Desktop (AVD) がAzure Stack HCI上でプレビューを開始したということで、実際にマルチセッションVDIの展開および想定した利用が可能なのか検証してみました。

Dell のラボに足を運んでロケテストも実施

高添氏:実際に検証してみてどうでしたか。スムースにできましたか?

内山氏:今回は Dellさんの検証ラボを使わせていただいて、実際にAzure Stack HCIを構成するサーバー4台を払い出していただきました。リモートでも構築したのですが、実際にラボに足を運んで、有線LANで接続してのロケテストも実施できました。

 検証環境としてはハイエンドな構成をご用意いただいたので、CPUやメモリを絞った実環境を想定した場合まで検証できたのはよかったと思います。

 実際の構築にあたってもドキュメント等がしっかり揃っていました。どうしても分からない部分についても Dellさんのレスポンスもすごく良かったので、非常にスムースに検証できました。

AVD検証環境
AVD検証環境

実運用を想定した多数の検証を実施

高添氏:実際の検証内容について紹介してもらえますでしょうか。

内山氏:今回の検証は、マルチセッション版WindowsクライアントOSをAzure Stack HCI上で動作させ、オンプレミス版AVDとして想定した動作になるのか、Azure版の環境と比較してどのような違いがあるかという点を検証しました。

 オンプレミスのAzure Stack HCI上にAVD用仮想マシン、AD、FSLogixプロファイルサーバーすべてを構築して、VDIで利用するシステムとデータ自体はオンプレミスのまま、ただし監視や制御はAzure側から一元管理できるか、オンプレミス版AVDが次世代RDSとして活用できそうかという観点で実施しました。

 オンプレミスVDI+Azureによる一元管理は、Azure、Azure Stack HCIをAzure Arcと連携することで期待以上の利便性の向上が確認できました。

 Azureの認証基盤は、条件付きアクセスやジャストインタイム(JIT)・ブループリント・多要素認証などセキュリティ機能を備えており、このようなセキュリティ対策が行われた環境からオンプレミス側の仮想マシンの起動停止やバックアップなどを制御できるのは、オンプレミスとクラウドの長所を融合できて大変すばらしいと感じました。

 監視についても、オンプレミス側をAzure Monitor、Log Analyticsと連携することでAzure Stack HCIをクラウド側から監視するだけでなく、 異常が発生した仮想マシンへAzure Arcから初動対応・調査・対処ができることを確認できたのが大きいと感じています。

 ただし、Azure ArcからAzure Stack HCIのWACを利用して仮想マシンへのコンソール接続は画面解像度などの点で今後に期待したい部分がありました。

 次世代RDSとしてのAzure Stack HCIによるオンプレミス版AVDですが、Microsoft 365の利用・ストアアプリの利用・Teams利用時の音声・映像についてShortpath接続の動作確認を行い、こちらも想定通りの動作となり非常に満足しています。

 またオンプレミス版AVDへの接続時にAzure AD条件付きアクセスで多要素認証を強制するという検証をおこない、こちらも想定通りの動作になりました。

 仮想環境とWeb会議の相性問題やローカルブレークアウト、今後のMicrosoft 365の利用拡大など、お客様の環境をより良くしていくきっかけとなる検証ができたと考えています。

高添氏:ちなみにAVDへの接続テストは、クライアントから Shortpathで直接アクセスしましたか?

内山氏:はい、直接アクセスする検証も実施しました。様々な業界でWeb会議のニーズがコロナ禍を経て高まっているので、Teamsと仮想環境との親和性を確認させていただいて、想定以上にスムースにWeb会議ができたということが、私としては得るものが大きく感じました。

高添氏:その上でTeamsも動かせたのですね。

内山氏:そうです。音声と映像のオフロード処理も実際に検証し、非常に魅力的だと感じました。

ヘルスケア領域でAzure Stack HCIがどのような効果を発揮するか

高添氏:検証してみて、Azure Stack HCIがヘルスケア領域ではどのような効果を発揮すると考えていますか。

加賀美氏:冒頭でもお話しましたが医療機関の中には古いシステムがかなり散在していて、それが物理サーバーとして乱立している状態が続いています。それらを統合して安全な場所に移していく強いニーズがあると感じています。

 今回検証したAzure Stack HCIは、それをシームレスに統合できることを確認できました。そして、統合した後に安心してクラウドに持っていくパスができたと思っています。

 まずAzure Stack HCIをオンプレミス環境で使用してみて、システムが完全に統合できたら、次のステップで比較的安全にAzureに移せる可能性が出てきたと思います。パブリッククラウドとの接続になりますので、まずはインターネット側に配備されているサーバー群が対象としてよいのではないかと思います。

 あとは通信環境の問題ですね。医療機関によっては、必ずしも外部との通信環境がしっかりしていると言い切れないこともあります。パブリッククラウドと接続した後に、緊急的に従来のやり方に戻したいと考えた場合にも、Azure Stack HCIやAzure Arcの管理で、オンプレミス環境に安全に戻せるという期待も持てたと思います。

ハイブリッドなクラウド運用でランサムウェア対策を実施できる

高添氏:内山さんに検証していただいたAVDの場合は、オンプレミス環境で仮想マシンが動いているんですけど、VPNを使わずに外からもアクセスできるようになっています。一部のランサムウェア被害では、VPN装置が狙われてウィークポイントになっていました。できるだけVPNのように外から中に入っていくっていうパターンをなくしていけると、セキュリティをもう一段階あげられるのではないかなと思います。

加賀美氏:それは、お客様にとっても期待できそうですね。

高添氏:最近、ランサムウェア対策として新しい技術を使っていただくというメッセージを出したんです。

日本Microsoftパートナー事業本部 パートナー技術統括本部
シニアクラウドソリューションアーキテクト 高添 修 氏
日本Microsoftパートナー事業本部
パートナー技術統括本部
シニアクラウドソリューションアーキテクト
高添 修 氏

 オンプレミス環境でバックアップしたデータをクラウドのストレージに上げるのですが、論理削除といって削除してもしばらくデータを保持できる仕組みを用意しました。また、削除に関する設定変更を拒否できるような仕掛けも用意します。例えば、14日間はデータを残すという設定をしておいて、データが意図的に削除されても確実に戻せる状態を作る。攻撃者は、攻撃に見せないようにデータを消したりするので、攻撃かどうかの微妙な判断はクラウド側のセキュリティ検知システムで検出して。少なくとも14日間あれば確実に戻せると。

 このように、検知の仕組みと消されない仕組みを連動させることで、ランサムウェアからデータを確実に守れるようになると考えています。

加賀美氏:これまでのランサムウェア対策は、専用サーバーとストレージを別に用意して、専門のエンジニアが2-3ヵ月かけて構築するっていうのが主流でした。それが、Azureのほうにそういった形でデータを退避する・レプリケーションを取るという選択肢があるのは、非常に大きいと思います。

高添氏:これまでは、クラウドは場所が違うので、データをクラウドに持っておくと安心ですみたいに言いがちだったんですが、ランサムウェアの被害に合いたくないからさらに外部との通信を閉じようと考えてしまう経営者の方々に「クラウドは安心だよ」というだけではなかなか響かないので、より具体的な対応策を提示しつつクラウド連携のメリットをお伝えしたいと思っています。

地場ベンダーが作ってきた自治体業務システムをハイブリッド化

高添氏:自治体に対しては、どのように適用できそうでしょうか。

内山氏:そうですね。いま自治体の中ではMicrosoft 365の導入が進んでいますので、E3やE5といったプランで、セキュリティ対策として効果的な機能を柔軟に選択できるようになればと思います。たとえば、IntuneやAzureの条件付きアクセスを、Azure Stack HCIのAVDの接続に適用できるといった具合です。

 また、地場のベンダーさんが作ってきたサーバーや業務アプリケーションで、どうしてもオンプレミス環境に残す必要があるといった場合にも、システムはオンプレミス環境に残しつつ、パブリッククラウドが持っているセキュリティサービスを導入するといった、良いとこ取りをした提案ができるのではないかと考えています。

 これまではハードルが高かったAzure Policyや Log Analyticsも、非常にハードルが低くなって選択肢に入れやすくなると思います。

高添氏:地場ベンダーさんが活躍できる余地があるのは、市場全体から見ても良いですよね。

クラウドの使い分けで受け入れやすくしていく

Microsoftの考えている利用例は、どのようなものがあるでしょうか?

高添氏:そうですね。セキュリティ対策は、Microsoft 365側から入っていただくと比較的受け入れやすくなると思っています。まずは皆さんが使っているクライアントとクラウドがつながることでメリットを感じていただき、それに慣れてもらう。セキュリティはクラウドから管理していくのが当たり前になってきているので、その考え方をサーバーでも導入するというパターンが作れると、お客様にとって壁を感じにくくなると思います。

 あとは、エッジ(Edge)と呼ぶテクノロジーが出てきています。何でもクラウドに配置するのではなく、データを生み出す場所の近くにいったんITを受け止める場所を作ったほうが効率がいい。そういうシステム設計を我々はエッジと呼んでいるんです。

加賀美氏:まだちょっと一般用語になり切れていない感じですよね。

高添氏:そうなんです。従来だとIoTみたいなセンサーやデバイスの領域に似ているかも知れません。たとえば病院であれば、不審者が侵入していないかカメラからの情報で検知するといったことが想像できますが、そこに個人情報が含まれているのでいきなりクラウドにアップロードせず、エッジにためてAIで検知させるといった具合です。

 こういう技術はコンテナ化されるケースが多いので、Azure Stack HCIは仮想マシンもコンテナも動かせる、そういうシンプルで低コストな基盤になっています。

内山氏:IoTにいきなりAIを乗せるというのもすごいですよね。

高添氏:だから、GPUを乗せて欲しいと言われていまして、その対応も進んでいます。

医療分野の働き方改革やスマートデバイス対応が加速する

なるほど、新しい利用分野や解決策も広がっていきそうですね。では、医療機関や自治体で今後注目されそうな課題では、どのような展望が広がっていきそうか、考えを聞かせてください。

加賀美氏:医療機関では働き方改革というキーワードですね。他の業界ではかなり強烈に改革が進んでいますので、医療業界でも同じように進む可能性があります。そうすると、今までの外側からの防御を考えるだけじゃなくて、外から中に入れるアクセス方法やセキュリティをデザインして、実装していかなくちゃいけないと思っています。

 そういう時に Azure Stack HCIの考え方やAVD for Azure Stack HCIの組み合わせの柔軟性が、そういった課題にも合致していくじゃないでしょうか。

 あと、数年前から進むと言われてたPHSのサポート切れですね。これまで医療機関ではみんなPHSを持っていたんですけど、それがサポート切れでリプレースが急速に進んでいます。そうすると、医療従事者が1人1台のスマートフォンを持つのが、来年ぐらいには訪れようとしています。

 そういった時に、Azureのデータ管理とMicrosoft 365といったコミュニケーションツールの活用が一気に加速して、Microsoft 365とAzureを組み合わせた新しい利便性やそれによる新しいコミュニケーションが生まれるという期待感を持っています。

高添氏:実は、Azure Communication Servicesというのがありまして、業務アプリケーションにTeamsのようなコミュニケーション機能を追加できるんです。医療の現場では、人に依存する部分だけじゃなく、みんなが同じ端末を使って作業をするといったことも良くありますよね。専用の機械も多い印象です。ログオンした人に依存するTeamsと、物理端末を中心にしたコミュニケーション機能、そういったものがちゃんと連携できる仕組みを作っていければと思います。

自治体の働き方改革を住民サービスの向上に活かしたい

自治体において今後注目されそうな課題では、どうでしょうか。

内山氏:自治体さんで、インフラを導入するため予算を取りやすいのは「国が言っているから」と「これを導入すると住民サービスの向上になる」なんですね。

 国としてはDX推進やガバメントクラウドといった方針がすでに掲げられていますが、やはり住民サービスの向上にAzure Stack HCIやハイブリットなITをどのようにつなげられるかというところに注視していきたいと考えています。

 今までの閉じたところから開かれた世界に出られるようになったので、そこに対してツールを提供できることにチャンスがあると思っています。

 都市部でも地方でも住民が訪問して何か対応する窓口サービスのような業務が少なからずあります。そういう時に、Webコミュニケーションやテレワーク・仮想デスクトップなどで柔軟な対応が可能になる場面がいろいろありそうです。

高添氏:窓口の側がモバイルで住民のところに行って対応することでもできそうですね。

内山氏:そうなんです。自治体内の支所や遠隔地での対応があります。これまでは集合して全体会議していたのが、その場でクラウドサービスやハイブリッド環境を活用した業務効率の向上が期待できますし、自治体の職員の方々が本来やるべき業務にあたる時間が増えると、住民サービスの向上にも繋がるのかなと思っています。

高添氏:マイナンバー対応も、いろいろなサービスと連携しながら活用する仕組みが出てくるいいですよね。

Microsoftが考えるガバメントクラウド対応の方向性

ガバメントクラウドについて、Microsoftの今後の対応はどのようになっていくのでしょうか。

高添氏:デジタル庁で推進しているガバメントクラウドにAzureも入らせて頂きましたので、Microsoftとしては、まずはAzureを使って自治体業務をお支えできるように準備をしています。

 基本の部品はある程度揃っています。例えば、データの暗号化では、自治体やパブリックセクターの方々が管理をしている鍵でデータをしっかり暗号化して管理して頂いて、Microsoft自身でも見られない状況をちゃんと作れるよう機能面でサポートするといった具合です。

 あとは、コンフィデンシャルコンピューティングというサービスが始まっています。ストレージ上のデータを暗号化するのは比較的簡単なんですけど、コンピューターで処理をしている時、つまりメモリ内やCPUで処理している時は暗号化されないまま処理していますよね。

 そこに新しいアプローチを始めていて、メモリの暗号化やCPU状態の機密性を確保することによって処理中のデータに対する攻撃からも防御可能にする仕組みをサービスとして提供し始めています。

内山氏:それはすごいですね。

高添氏:ただ、逆にITが難しくなって使う側が工夫しないといけない機能もあるので、ただしく情報をお伝えしつつ、今後はできるだけ皆が使えるようにしていきたいなと考えています。

Azure Stack HCIやハイブリッドITの使いやすさが働き方を変える

最後に、Azure Stack HCIやハイブリッドITについての期待感を一言ずつお願いします。

加賀美氏:医療でも自治体でも言えることですが、Azure Stack HCIを活用したハイブリッドITは、非常に使いやすくなってゆくと思います。これまでは、パブリッククラウドとオンプレミス環境がほぼ分離された状態だったのが、Azure Arcで統一的に管理できるようになるからです。

 一方で、ユーザー側は慢性的なIT人材不足で、IT技術者を増やすのは決して簡単ではありません。我々のようなIT専業ベンダーが、ユーザーになり替わってプライベートクラウドを構築して運用できるAzure Stack HCIの考え方や柔軟性は、我々ITベンダーにとっても可能性のある面白い技術だと思っています。

内山氏:従来のシステムを活かしつつ、皆さんが利用できる形を自治体さんは望んでいます。今までは閉じた世界にあったシステムを、ハイブリッドな環境におくことで、安全かつ解放しやすい環境に置くことができるメリットは大きいと思います。

 それが住民サービスの向上と自治体の現場で働く方々の働き方改革につながっていけば素晴らしいと思います。

高添氏:そうですね。これまでお二人に説明いただいたように、医療機関でも自治体でも規模や制約によって、パブリッククラウドを使いにくい要件があると思います。そこはしっかりとハイブリッドの良さを活かしながら、オンプレンスでもちゃんとサービスを提供していければと思います。

ありがとうございました。

提供:日本マイクロソフト株式会社
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