なぜWinnyからの情報流出が止まらないのか? - (page 4)

高橋正和(インターネットセキュリティシステムズ)

2006-07-14 12:00

(3)機密性の高いデータを家庭のPCに入れるリスク

 暴露ウイルスに感染し、過去に家庭のPCに保存したデータが流出した事例も少なくない。

 データを家庭のPCに入れた際には、Winnyは利用しておらず、流出する危険性も少なかったのだが、後日Winnyをインストールし、暴露ウイルスに感染してしまい、過去に保存したデータが流出したケースもある。この場合は、機密性の高いデータを、確実に消去しなかったことが致命傷になっている。また、印刷をするためにUSBメモリをPCに挿したことから、データが流出した事例もある。

 筆者は、デジタルカメラの画像を、自宅のPCで印刷することがあるが、このときにもし、(1)と(2)の条件が整っていれば、USBメモリに入っていた画像は、流出していたかもしれない(家族旅行の写真といえども、公には公開したくないものである)。

社会人が扱う情報の性質

 冒頭に書いたように、学生であっても、社会人であっても、利用するPCは変わらず、メールやワープロ、表計算といった基本的なアプリケーションも、まったく変わらない。しかし、学生と社会人では大きく異なる点がある。それは、取り扱う“情報”である。

 社会人になって怖いことのひとつは、自分の日常が、そのまま機密情報になっていることがある点である。

 たとえば、新人同士の親睦会で、お互いの仕事について話をするのは、ごく普通のことであるが、自分が参加しているプロジェクトや、隣の部門の業務は、社内でも一部の方しか知らない極秘プロジェクトかもしれない。

 仕事で取り扱うドキュメントも気を使わなければならない。顧客情報やアンケートの結果を、単にPCに入力するだけの仕事でも、その情報は個人情報に該当する。

 万一、漏洩してしまった場合は、情報漏洩事件の当事者となってしまうかもしれない。

 例を挙げればきりがないが、日常的に仕事で扱う情報が、想像以上に重要な情報であることは少なくない。Winnyによる情報流出事故を調べてみると、日常的に取り扱うデータが機密性の高いデータであることを、つい忘れしまっていると思われるものも多い。

 しかし、これは人ごとではない。自ら意識していない限り、日常的に扱っている情報やデータは、その重要性・機密性が忘れるものである。

 新入社員の方々も、今は扱っている業務やデータの重要さ、責任の重さを感じながら仕事をされていることと思うが、業務に慣れるにしたがって、その気持ちを忘れて行く可能性が高い。是非、業務やデータの重要性を確認することを習慣づけてほしい。

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