SAP共同設立者、CTOに課題を出す--その答えが「HANA」 - (page 2)

末岡洋子

2011-11-25 11:47

Plattner:コンピュータ科学の点から見ても、カラムナデータベースの技術構造は優れており、我々は5年程前にこちらの原理のほうが正しいとわかった。HANAは完全なリレーショナルデータベース(RDB)として機能するので、RDBからメタデータを含むデータを抽出してHANAに載せることができる。

 HANAの哲学はスキーマやキューブなどの複数のステージがないシンプルさにあり、システムを大きく簡素化できる。OLAPとOLTPを統合でき、OLAP計算エンジン、プランニングアルゴリズム、パターンマッチングエンジンなどの機能があり、構造化データと非構造化データに対応する。顧客からの電子メールやソーシャルネットワークには苦情や批判など貴重な情報が埋もれており、これをキャッチすることは企業にとって重要だ。これらのことを実現したいと思っていた企業は多く、プッシュする必要はない。

 SQLを理解している人には、画期的なものとして受け止めてもらっている。大企業が実際に動かしており、SAPや新しいアプリケーションを高速に構築している。私としては、顧客が迅速に新しいモデルにシフトして自社ビジネスを変えていること、アプリケーションを構築していることと、そのスピードに驚いている。

 業界もこのモデルをフォローするはずだ。Oracle、IBM、Microsoftもインメモリ技術を強化していると聞いている。

--メモリの価格はハードディスクより高価だが、コストは導入の障壁にならないのか

  • SAP共同設立者Hasso Plattner氏(左)と、同社CTOのVishal Sikka氏(クリックで拡大)

Sikka:メモリのコストは下がっており、コスト性能比は大きく改善している。メインメモリの価格が購入しやすいレベルに下がっており、いま現在、企業全体を完全にインメモリで運用することは経済的に見ても可能だ。

Plattner:カラムナストアの特徴は拡張性にある。フィールドをオンザフライで、システム構造を変更せずに追加できる。これまでのRDBでは、データをアンロードしてスキーマを変更して……と作業が必要で(RDBが主流だった)20年の間、頭痛の種だった。データベース管理者が数週間かけてやった作業が、HANAの場合、技術的には即座に可能だ。スキーマの変更が容易になれば、開発コストは大きく削減される。

--インメモリコンピューティングがエンタープライズのメインストリームになるのはいつか

Sikka:SAPは、既存ビジネスに支障をきたすことなく導入できるようにしている。その点から見て、すでにメインストリームになってきたといえる。

Plattner:「NetWeaver Business Warehouse(BW)」のサポートが発表され、1万6000社のBW既存ユーザーがHANAを動かせるようになった。(飲料メーカーの)Red Bullは2週間弱で従来のBWシステムからHANAベースのBWに移行した。Lenovoもだ。

 私の感覚では、エンタープライズシステムの歴史が浅いほうが、新しいモデルの受け入れは速く進むと見ている。中国は米国より速く、米国は欧州より速いだろう。

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