アナリティクスについて経営者が知っておかねばならないこと - (page 3)

Kishore Swaminathan (Accenture)

2011-12-28 09:00

 現在、医薬品企業は、臨床試験で発見されなかった薬の副作用、言い換えれば決められた手続きに従って行われた臨床試験の中で明確に確認できなかった情報については、法的にも道徳的にも免責されている。しかし、ブログやソーシャル・ネットワークが発達し、人々がこのような情報を自由に公然と共有するようになった今日の社会では、医薬品企業としては世間一般の動向を注視し、そこで得られた情報を自らの臨床データに統合する責任と義務を負うことになろう。

 情報や情報の統合についてのアプローチとして、「知らなかった」または「知ることができなかった」に代わり、(法規制または競争上の理由から)「知っているべきだった」がニューノーマル(新たな標準)となるであろう。

分析麻痺症候群の終わり

 未来の企業は地に足の着いた、実証主義者な経営者によって運営されるであろう。このような人は、関連する全データがそろい、分析されるまで一歩も前に進まない。こうした行動は、分析麻痺症候群につながるのではないかとの指摘があるかもしれない。全くの的外れではないだろうが、しかし、一般的な見方ではないとしても、高度な分析能力を持ち経験を重んじる企業の方が今日の企業に比べこのような病気にかかる確率が低いのである。

 企業が分析麻痺症候群のわなにかかるのは次の3つの場合で、それぞれ非常に特徴的である。1つはデータの集め過ぎである。傾向が既に明確に読み取れるのにもかかわらず、追加データにこだわり価値の薄いデータの収集に必要以上にコストをかけることである。データ収集にはコストがかかる。また何もしなければ後で付けが回ってくる。アナリティクスに優れた企業は「やり過ぎ」にもコストがかかることをよく理解している。

 分析麻痺症候群の2つ目の原因は、存在しないデータを待つだけで何もしないことである。これは、必要データを生み出すための新しい方法を試みる企画力が不足していることを表している。上述にもあるとおり、新しい方法を試すにはコストがかかる。何もしないこともコストがかかる。アナリティクスに優れた企業は、データ不足を認識し、問題解決のためには新しい方法を試してみる価値があることを明確に理解している。

 分析麻痺症候群の3つ目の原因は、ほとんどの企業は自社のリスク許容度を把握していない、または明確化していないため、行動を起こさないことより行動を起こして失敗したことを責め立てる傾向が強いことである。その結果、成果が保証されるようなデータがそろうまで行動を起こさない経営者が多くなる。アナリティクスに優れた企業は自社のリスク許容度を明確に把握している。不確実な状況下での行動指針や行動モデルを持つこのような企業は、成果が伴わない行動と「無活動」とを比較評価するにあたり、バランスのとれた判断を行うであろう。

直感の新たな位置づけ

 経験主義とアナリティクスにより、今まで企業で大事にされていた直感、勘、闘争心等が排除されてしまうのか。

 そんなことはない。

 科学は経験主義そのものでそこに感情が入る余地はないが、それを扱う科学者はそうではない。科学は客観的で機械的だが、創造力や直感力に優れ、発想力が豊かな科学者は重要である。

 データは様々な解釈が可能である。ある物理現象またはビジネス現象を表す1、2、6、24、33という数列を考えてみよう。33を別扱いにするとこれは階乗数列であるかもしれない。また4つ目の数字は常に前の3つの数字を掛け合わせた値を2倍にしたものと言うこともできる。さらには、5つ目の数字は常に前の4つの数字の総和であるとの解釈も成り立つ。

 いずれの解釈も正しいが、この数列からある理論を引き出したり、それに反証するには、まだいくつかの数字が必要となる。優れた科学者は、理論を正当化するに十分なデータがそろっているか、もしそろっていなければどのようなデータを新たに集めるべきか、適切なデータを集めるにはどのような方法を構築すべきかを知っている。

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