SAS Instituteが提唱するビジネスアナリティクス(BA)。これは従来のビジネスインテリジェンス(BI)よりも多彩にデータを分析して、過去や現在だけでなく、未来に何が起こりえるのかも予測するものとして注目されている。
その一方で、BIやBAが対象とするデータの範囲や総量は劇的に増加している。いわゆる“Big Data(ビッグデータ)”だ。ビッグデータにはさまざまな意味合いが含まれているが、1秒あたり数百や数千、数万件という“Fast Data(ファストデータ)”も含まれる。このファストデータを処理する技術として注目されているのが複合イベント処理(Complex Event Processing:CEP)だ。欧州を拠点に活動する同社フェローのAllan Russell氏によると、SASもCEP製品を開発しているという(後編はこちら)。
BAは意思決定をサポート
――GartnerがCIOにテクノロジの優先度を聞いた調査では、2011年でBIは5位でした。昔からBIに興味はありながらも、実効性に疑問があるという印象があります。CIOに対して、何がBAのメリットになりますか。
Gartnerの調査で2~3年前はBI、BAともに高い位置にありましたが、今はサービスやアウトソーシングが上位になっています。CIOにも、テクノロジにフォーカスしている方と、ビジネスにフォーカスしている方がいます。
テクノロジにフォーカスしている方に対しては、(事業部門が必要とするITをセルフサービスのような形式で導入できる)サービスカタログやクラウドを中心に説明します。ビジネスにフォーカスしている方に対しては、結果がどうなるのかに焦点を当てて説明しています。
CIOの中にはエンタープライズアーキテクチャ(EA)に関心を持つ方がいて、その時にはサービスカタログを作成しました。でも、オペレーションにフォーカスされていて、意思決定にはフォーカスしていませんでした。これはちょっと残念でした。もっと意思決定にフォーカスしていけば良い結果が出たのではないかと思っています。
BA活用ではスキルが必要
――日本市場においても、国外同様BAはなかなか難しいという印象があるようですが、その原因は何だとお考えでしょうか。
BAを成功裏に実行するには、一定のスキルが必要になるためではないでしょうか。たとえば最適化モデルや予測モデル、スコアリングモデルなど、いろいろなモデルがありますが、そういったモデルを作るスキルがまず必要になります。
その点は欧州も同じで、スキルを持つ人を見つけるのが難しい状況です。本来は企業全体でBAを導入すべきなのに、実際には部分的な利用にとどまっていることも、スキルを持つ人がいないことが理由のひとつだと思います。
BAはマーケティング用語ではありますが、定義が広すぎて、するべきことがうまく伝えられないということも理由のひとつです。そのため、ビジネスプロセスの中で改善のためにどのような意思決定をすべきか、ということもBAの説明要素のひとつになっています。
多くの組織の中で、彼らが持っているビジネスプロセスを理解して、なぜそれがうまくいっているのか、あるいは順調ではないのかといった部分で理解されているところが多いようです。ビジネスプロセスの改善という側面で話をした方がわかりやすいかもしれませんね。
SASでも、ひとつのテクニックとしてバリューマップを用意しています。これはBAをどこで導入するかの判断に活用できるもので、それによりどのような価値を享受できるのかをイメージできます。
また、たとえばコスト削減、収益を上げる、リスクを管理するといったことで価値を判断すると、BAを理解しやすくなります。そうでないと意味がなくなってしまいます。
BAは全社的に活用すれば高い価値が得られる
――BIは、米国では統計の専門家が解析して経営層に見せるという使い方ですが、日本では現場レベルがレポーティングを見て仕事のプロセスを変えていくという使い方が一般的になっています。BAの場合は、全社的に使った方が効果が出るという理解で間違いないでしょうか。