SAS Institute Japan(SASジャパン)は9月14日、分析プラットフォームの最新版となる「SAS 9.3」の国内での提供を開始したと発表した。
データ管理、分析、レポーティングといった、あらゆるビジネス分析ソリューションのベースとなるプラットフォーム部分の機能強化となるが、SASジャパン、ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長の宮田靖氏は、今回のバージョンアップの特長として、いわゆる「ビックデータ」への対応を強化している点に言及した。
近年のハードウェア性能の向上、コストの低下、さらにはセンサやモバイル端末といった機器の爆発的な普及により、そこで生み出され、蓄積されるデータの量や種類は拡大した。これに伴って、ビジネスアナリティクスの分野では、分析対象とすべきデータの増大、データの種類の多様化、分析時間短縮のニーズ、分析手法やアルゴリズムの複雑化への対応といった課題が出てきているという。新バージョンでは、これらの課題に対応していくための機能を整えているとする。
SASジャパン、ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長の宮田靖氏
「ビッグデータは、集めて保存しておくだけでは意味がない。そこから効率よく必要なものを抽出し、分析し、体系化する“ビッグアナリティクス”が存在することで、初めて価値が生まれる」(宮田氏)
SAS 9.3では、基本となるデータ管理、分析、レポーティングといったそれぞれの機能について、対応環境の拡大、機能拡張、より使いやすいユーザーインターフェースの提供といった強化を実施しているが、中でも膨大な量のデータへの対応という点において、処理の高速化やスケーラビリティの向上を目指した取り組みを行っているという。
SASジャパン、ビジネス開発本部プラットフォームグループ部長の芝裕一氏は、「SAS Scalability&Performance戦略」として、処理の高速化や分散技術への対応に向けたロードマップを紹介した。
SAS 9.3では、全対応プラットフォームにおいて、ベースとなるSAS処理エンジンを最新のOSへ最適化したほか、SAS/ORにおける計算処理速度の向上、BIダッシュボードツールのパフォーマンス向上が行われている。さらに、分散コンピューティングのパワーをSAS上で活用するために、「SAS Grid Computing」「SAS In-Database」「SAS In-Memory Analytics」といった技術を提供するという。
Grid ComputingおよびIn-Databaseは、既に提供が開始されている。前者は分析処理を分散環境で行う技術、後者はこれまでSAS側で実行していたプロシージャやモデリング、スコアリングなどの処理をSQL/UDFに変換しデータベース内で実行することで高速化を図るものだ。
SASジャパン、ビジネス開発本部プラットフォームグループ部長の芝裕一氏
In-Memory Analyticsは、SMP(Symmetric Multiprocessing)およびMPP(Massively Parallel Processing)環境上での実行に対応したプロシージャとして提供されるもの。分散環境に存在するそれぞれのノードに対してインメモリでの分析、実行の指示を行い、最終結果の収集を行える。これによりI/O負荷がより低く、高速な分析が可能になるとする。芝氏によれば、「米国のある大手小売業者では、2000店舗、約3万品目にわたる価格最適化分析にアーリーアダプタとしてIn-Memory Analyticsを利用しており、従来5時間半かかっていた処理が約20分にまで短縮したという事例がある」という。この機能は、2011年第4四半期に正式にリリースされる予定だ。
宮田氏は、SASのメリットとして、「買収によらないソリューションラインアップの拡充」を挙げた。「SASでは、ビジネスアナリティクスに必要となるプロセスを自社で開発し、強化していくというプロセスを創業以来とってきた。これにより、買収を繰り返して必要なパーツをそろえるという他のベンダーのソリューションに比べ、より統合度の高いプラットフォームを提供できる」と、その強みを強調した。