英国式シリコンバレーは成功するか?--ロンドンの「テック・シティ」(後編) - (page 4)

Steve Ranger (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2014-02-14 07:30

#6:テック・シティはこれからどこへ向かうのか?

 シリコン・ラウンドアバウトがテック・シティになったように、Tech City Investment Organisationは少し前に、ロンドンにおけるデジタル起業家の居留地域のさらなる拡大を受けてその地をTech City UKとして再ブランド化した。


同地域ではここに拠点を置くIT起業家を祝福する取り組みを行っている。通りの名前を見てもそのことが分かるはずだ。
提供:Steve Ranger/TechRepublic

 TechstarsのJon Bradshaw氏には、ロンドンにおける新興企業の興隆によってより大きな影響が生み出されるのか、そしてこの地域はさらなる広がりを見せるのかという疑問がある。同氏は「オールド・ストリート以上のものになれるのだろうか?ロンドンのより広い一角を占められるのだろうか?ベルリンではIT企業が至るところに存在している」と述べた。

 また、熱意と、勢いを感じる証拠はあるものの、まだまだ初期の段階であり、シリコンバレーにおける成熟したエコシステムの象徴とも言える買収や新規株式公開(IPO)、すなわち起業家が大金を手にし、その資金を元手に小規模ビジネスを立ち上げ、プロセスを最初からやり直せるような大きな「出口」にも至っていない。

 テック・シティはいまだに初期の立ち上げ時期にある。テクノロジ分野のアクセラレーターたちは、自らの成果としていくつかの企業の波を作り出しただけであり、シリコンバレーで数十年にわたって実践されている、株式上場や買収によって次の起業に使える資金を捻出できるというところにまで至っている企業はほとんどない。

 Bradshaw氏は「オールド・ストリート、すなわちシリコン・ラウンドアバウトに元からいるテナントの1つがいったん出口に至り、5〜6年の好循環を完遂すれば、次の選択肢を持つ従業員のところに資金が集まり、一巡したこのサイクルを繰り返すことが可能であると証明できる。これによってシステムが再起動し、資金が還流していくのだ」と述べている。

 テック・シティに対するよくある批判の1つに、目に見えない壁の存在がある。つまり(今では)簡単に起業できるが、数人のチームの会社を数百人、あるいは数千人規模の会社に変えられるだけの資金を捻出するのははるかに難しいのである。Tech City UKは最近、50の企業に追加サービスへのアクセスを提供するプログラムを立ち上げた。これによって、ベンチャー資金を求めてサンフランシスコを目指したり、ウォールストリートで上場するためにニューヨークに移るのではなく、ロンドンでの株式公開を奨励するというわけだ。また、ロンドン証券取引所は、成長著しい企業に対してより魅力的な選択肢を提供するよう規則を改定した。これによりアナリストや広報関係などの仕事の創出といった波及効果が生み出されている。

 実際のところ、これはテック・シティの持続的な影響となり得る。その影響とは、ホクストンの不動産価格や、近所のカフェで出てくるコーヒーの品質に対してではなく、ロンドンのより広範囲な経済成長に対してである。2014年は、この地域が飛躍的な進歩を見せるか、再び色あせていくのかが明らかになる年だと多くの人が考えている。

 しかし現在、テック・シティの規模と信用は増大し続けており、当地を去る者でさえもその魅力を感じている。Lumiの会社はこの地を後にしたものの、このような状況は変わるかもしれないとStiksel氏は述べた。同氏は「この近所に戻ってくる可能性は十分にあり、そのための準備ももうほとんどできている。ここに拠点を移した理由はあまり注目されたくないためだったが、今ではそれが少しマイナスになっているからだ」とも語った。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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