しかし、アイデアだけがすべてではない。「技術面はやはり大切な部分。決して軽視するという話ではないが、よりカギとなるのは技術力よりも事業開発力、市場開拓力だ」と東海林氏。そうした点から、昨今、グローバル市場で求められているキーワードは「コーディネート力」にあるという。
特に社会インフラなどに非常に大きな市場があると期待される新興国においては、その要素が強く求められているとのこと。その具体例として注目すべきはドイツのSiemensだ。Siemensは、欧州における総合的な家電、IT機器メーカーの1つだが、近年、新興国で空港のセキュリティシステムや運用システムなどを多く手掛け、実績を残している。
東海林氏によると、その秘密もやはりコーディネート力、トータルでのソリューション構築力にあるという。
「日本の企業の多くは非常に優れた技術力があり、その面だけで言えば優位な立場にある。しかし、グローバルのICT市場では、これまで日本ではあまり求められてこなかった、そういったコーディネート力が実はより求められる傾向にある。一方、日本企業のこだわりとして、高い技術力はパフォーマンスに比例するという考えが根強い。しかし、海外では必ずしもそれが求められているわけではないということを肝に銘じておくべき。もちろん、ここでも技術力がなくていいという話ではないが、技術力があれば勝てるということにもならないのがグローバルだ」と忠告。
つまり、グローバル展開で苦戦する日本企業には発想の転換が求められているということになる。
求められる横展開の意識
さらに、市場開拓力という視点では“横展開の意識”を掲げる。
「コーディネート力という場合にはいくつかの切り口があるが、そのうちの1つには素早く実績を作って提示する力というのが含まれる。海外では、実績至上主義という部分が大いにあり、単に高い技術力やデータ分析力を示すよりも、やはり他国での実績が一番説得力を持つ。そしてそれを横展開していくというやり方が有効」と東海林氏。
また、現地での実績の築き方については、現地プレーヤーをいかにうまく巻き込むかをポイントの1つとして挙げる。
「全部自前でやるのではなく、適宜必要なプレーヤーと組んでやっていく柔軟さが必要。例えばSiemensのケースで言えば、足りないリソースは、自社の品質基準にこだわるだけではなく、現地で求められる品質レベルとも照らし合わせて、現地のプレーヤーを積極的に採用するという舵の取り方。ローカルプレーヤーとのそうしたアライアンス力は不可欠だ。Siemensに関して言うと、ファイナンスの調達というところまでやっている。自分たちの本業でない部分も含めてコーディネートの幅を広げている」