デジタルバリューシフト

デジタル化が企業価値を変える--バリューシフトの時代 - (page 3)

千葉友範(デロイト トーマツ コンサルティング) 林 大介(デロイト トーマツ コンサルティング)

2014-09-04 07:00

IoT時代に発生するデジタルバリューシフト

 シスコシステムズは、2020年には370億個のインテリジェントデバイスがネットワークに接続されるようになると予測している。現在は約100億個と推定しており、3.7倍になる計算だ。たった3.7倍と思えるかもしれないが、個人ベースで考えればとても大きな数字である。

 家の中の電化製品や住居のメータ類、眼鏡や指輪などの身につけるものなど、相当数をネットワークに接続しないとこの数字にならないことが分かるだろう。個人レベルでも大変なことであるから、企業にとってはさらに大きなインパクトがある変化ということになる。

 では、IoT時代を迎えたときに発生するデジタルバリューシフトはどのようなものだろうか。企業が管理するオンラインのインテリジェントデバイスは同じく3.7倍かもしれないが、処理するデータ量はこれよりもはるかに大きな数字になるだろう。そのオンラインデバイスからアップロードされる情報はそのままでは何の意味もなく、ビジネスとして意味のある数字に編集する必要があるからだ。情報は処理ではなく編集する時代に突入しているのだ。

 データを集めるだけでは企業の価値は何も変わらず、それらを加工し、組み合わせて、意味のある情報に仕上げられるレベルになって始めてデジタルバリューシフトが起こる。また、筆者らは編集されたデジタルデータは現在よりも頻繁に第三者に提供されるものになると予想している。

 それは、企業1社で集められる情報には限界があるからだ。複数の企業が互いに情報を交換し合い、さらに意味のある情報に仕上げていくことが日常化するだろう。企業が持つ情報が、企業の新しい価値を形成するのだ。もし、第三者に提供するほどの情報を持っていなければ、「情報価値弱者」として他社から情報を買う立場になるかも知れない。

 このデジタルバリューシフトを説明するのに最も適した例の1つは本田技研工業の「インターナビリンク」だろう。自社の自動車ユーザーから集めた膨大な走行データをもとにナビゲーションするサービスであるが、急ブレーキの多発地点を自治体に提供するなど、既に第三者への情報提供を始めている。本田技研工業は製造メーカーでありながら、「安全な道路交通網を整備するための重要な情報源」という企業価値を新たに加えているのだ。

 連載では事例を中心にIoT時代のデジタルバリューシフトについても解説していく予定だ。

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