日本マイクロソフトは10月7日、企業のモバイル基盤を支える製品分野について、同社の取り組みを説明する記者向けのブリーフィングを開催した。「クラウド時代のモビリティソリューション」をテーマに、ID管理やシングルサインオン(SSO)などの課題を挙げた上で、解決するための製品を紹介した。
2月に最高経営責任者(CEO)に就任したSatya Nedella氏が打ち出す「Cloud OS」戦略の中で、ID管理や端末管理、データ管理などの機能を提供する「Enterprise Mobility Suite」によるモバイル基盤の構築の方向性を示した。
日本マイクロソフトの業務執行役員でサーバープラットフォームビジネス本部長を務める佐藤久氏は「Nadella体制になって驚くほどMicrosoft社内が変わってきている」と話す。
日本マイクロソフトの業務執行役員でサーバープラットフォームビジネス本部長を務める佐藤久氏
戦略を示す丸形の図について「以前ならこうではなく、サーバ、プラットフォームなど3つの“ピラー”に分ける癖が社内にあった」という。現在は「サーバ担当の私なら、その視点からこの丸形で示した戦略図を語り切ることが求められている」(同氏)とする。
佐藤氏は日本マイクロソフトが考えるクラウドについて「カフェテリアにする」と表現。モバイルを前提にしたクラウド環境を構築する際に、ネットワークやストレージ、アプリケーションなど必要なリソースを、カフェテリアでパンを選ぶようなイメージで取り入れて構築していく。ゼロからシステムを構築する従来型の手法とは考え方が違うことを強調した。
この日、新たな戦略に沿って説明したのはITガバナンスの領域だった。SSOやIT資産管理、コスト管理、ツールの一元化といった機能を、ユーザーニーズに応じて提供する。
従来、例えば社内でSSOの仕組みをつくるのが難しかった理由は、さまざまなシステムが単体か、もしくはクラウドでもシングルテナントで構築されていたためだという。
クラウド周りの技術が進展し、1つのシステム環境を複数のユーザー部門などが柔軟に使いこなせるようにするマルチテナントが実用化されることにより、たとえ拠点が国をまたがったとしても全社的にSSOを実装できたり、ID統合、IT資産管理、ツールの一元化、コスト管理といった機能を組織にまたがって導入できるようになるという。
このような環境の構築を進めるための具体的な製品としてマイクロソフトが展開しているのが「Enterprise Mobility Suite」(EMS)だ。EMSは「Azure Active Directory Premium」「Windows Intune」「Azure Rights Management Service」の3製品を利用できるスイートライセンスという位置づけになる。
Azure Active Directory Premiumは、社内とクラウドのID統合を実現。単一のIDでオンプレミスで構築した社内システムと外部のクラウドの両方にアクセスできるようにする。Windows Intuneはクラウド型のモバイルデバイス管理(MDM)製品で、iOSやAndroidにも対応する。Azure Rights Management Serviceは、iOSやAndroidに対応したクラウドサービスで、取引先など社外ユーザーとの安全なデータ共有を実現するための製品だ。
EMSのライセンス価格は、標準価格ユーザー1人あたり1カ月620円。12月末までは40%ディスカウントキャンペーンで370円と設定している。
EMSの導入支援パートナーは、CTC、ウチダスペクトラム、大塚商会、CSK Winテクノロジ、ソフトバンク・テクノロジー、日本ヒューレット・パッカード、日本ビジネスシステムズ、ビービーシステム、富士ソフト、富士通の各社。