OracleのデータベースとLinux連携のところでは、たとえばストレージとのやり取り部分でLinuxカーネルを拡張しています。これは、ストレージのアダプタからデータを書き込む際にディスクにチェックサムを与えるものです。Oracle Databaseから書き込む際にチェックサムを投げるのと同じように動くものを、Linuxカーネルにも入れています。
データベースのようなソフトウェアでは、書き込みの際に知らないうちにデータが壊れているのを防ぎたい。そのため、Oracle Databaseではチェックサムを利用しています。それをLinuxのカーネルでもチェックサムを投げるようにする。これでディスクのファームウェアがチェックし、問題があればデータを書き込まない制御をします。書き込み段階でチェックしリカバリできることは重要です。読み込みだと、アクセスがしばらくなければリカバリするのは数カ月後かもしれません。この拡張はOracle Databaseのために入れたものですが、他のアプリケーションでも十分にメリットがあります。
このあたりはOracleが古くからさまざまなストレージベンダーと交流を持ち、エンタープライズレベルで技術連携してきたから実現できたものです。ちなみにこれは、Oracleのデータベースチームからのアイデアでした。データベースのチームもJavaのチームも近くにいて、彼らとはよく会話します。
--SPARCで進めているSoftware in SiliconのようなアプローチはLinuxの世界でも進んでいますか。
Coekaerts SPARCのアドバンテージに対し、Intelが手を打っているのが現実です。実際にSPARCのアドバンテージ部分を、Intelは自社開発ロードマップに取り込もうとしています。そういう中で、Software in Siliconも進んでいくでしょう。
Oracleとしては、Oracle Linux for SPARCのようなものを作るわけではありません。Linuxカーネルそのものが、SPARCのSoftware in Siliconをサポートするよう取り組んでいます。LinuxカーネルがSPARCをサポートすることで、1番効いてくるのは性能部分です。現状、IntelのCPUでは大規模でもスレッド数は240本程度。これがSPARCなら4000本とかすぐ実現できる。やがてIntelのCPUでも4000スレッドが実現できるでしょう。そのときにもOracle Linuxならすでに4000スレッドは経験済みですから、安心して使うことができます。
Oracle Linuxに付加価値を与えるKsplice
--ゼロダウンタイムアップデートを可能にするKspliceをOracleは買収し提供しています。かなり興味深いツールだとは思うのですが、まだまだ市場認知度が低いのではないでしょうか。
Coekaerts 私は認知度が低いとは思っていません。Oracle LinuxがRed Hatとの競合で勝利している理由の大きな部分にこのKspliceがあると思っています。なので、Oracle Linuxユーザーであれば、Kspliceの価値は十分に理解しているでしょう。ただし、KspliceはあくまでもOracle Linuxユーザーに提供する付加価値サービスです。そのためにLinuxのコミュニティでの認知はそれほど高くないかもしれません。