OpenStackでVMware基盤クラウド化--大手通信企業のインドネシア事業

末岡洋子

2016-02-25 07:30

 日本企業の海外進出が進む中、習慣や環境が異なる現地でのITインフラの調達や構築が一つの課題となっている。

 インドネシアに拠点を持つ、日本のある大手通信企業がシステムインテグレーション事業展開にあたり、支援していたエーピーコミュニケーションズ(APC)が至った回答は「OpenStack」だった。2015年12月には、Mirantisとの戦略提携も発表した同社。インドネシアでの事業担当者に、なぜOpenStackなのか、また導入しての感触を聞いた。

日本の大手通信企業のITインフラ構築


 APCは、この大手通信企業から、インドネシアの拠点で自社の顧客向けに迅速なITインフラを構築し、サービスを提供したいという要望を受けた。

 この通信企業はインドネシアで既に回線系のサービスを提供していたが、日系企業の進出増加を受け、これらの潜在顧客にデータセンターを活用してITインフラを提供できないかと考えていた。

 インドネシア市場には、サーバなどの機器は輸入するしかなく、物理的な意味で輸送がスムーズにいかないことが多いなど、日本とは異なる市場環境があり、その解決が求められていた。

 そこで、この通信企業は資源を仮想化して集約し、効率的に使っていくという方針を固めた。仮想化技術にVMwareの「ESXi」を利用しており、この基盤に高い操作性を持たせて運用するためには、集中統合管理とインターフェースが必要だった。

APCの顧客である日本の大手通信企業が運用するシステム。OpenStack導入を図る
APCの顧客である日本の大手通信企業が運用するシステム。OpenStack導入を図る

Nova、Glance、Horizonなどを採用

 2014年春にこの相談を受けたAPCのシステム基盤エンジニアリング事業部 ビジネスソリューション部 部長を務める阿部伸哉氏が至った結論は、OpenStackの採用だった。

 「ESXiと組み合わせたフロントエンドとして、マネジメントコントローラのような管理用機能を使っていけると考えた」と阿部氏は採用までの流れを説明する。

 OpenStackはさまざまなコンポーネントを持つが、このプロジェクトで利用したのは、ウェブフロントエンドの「Horizon」、仮想ネットワーク「Nova」、イメージの保管と管理の「Glance」、VMwareとの連携に必要となるボリューム管理の「Cinder」だ。

VMwareの仮想環境をOpenStackで制御

 これにより、VMwareの仮想環境を制御するシステムをOpenStackで構築。マルチテナント構成で、テナントセグメント内に物理ファイアウォールと仮想インスタンスが混在する環境を構築した。VMware上では顧客サーバ、監視システム、統合監視、契約管理システムといった仮想マシンが動く。(図)

 提案が受け入れられ、案件が正式にスタートしたのは2014年秋。それから半年近くにわたり、APC社内に環境を構築し、連携部分を中心に検証してきた。その後、顧客設備での環境構築、顧客環境でのテストなどを経て、2015年秋に現地で本番環境を構築した。あとは商用サービスのスタートを待つのみだ。

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