OpenStackエコシステムの牽引役を担うのは誰だ

対談:全国の自治体クラウドをOpenStackで共通化したら?

羽野三千世 (編集部) 2016年02月10日 07時00分

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 IDC Japanの予測によれば、国内のOpenStackエコシステム市場は、2014年から2015年にかけて2.5倍に拡大した。これは、主に大手のコンテンツサービスプロバイダーやクラウドサービスプロバイダーの採用増加によるものだ。2016年の市場規模は前年比3倍の61億5000万円に拡大する見込みだが、課題は、一般エンタープライズ(非ITの大手企業)での導入をどのようにして拡大していくかになる。

 一般エンタープライズでのOpenStack活用を加速する起爆剤は何なのかーー。ビットアイル・エクイニクス 執行役員 成迫剛志氏と、OSSコンソーシアム 副会長の日立ソリューションズ 技術開発本部 研究開発部 主管技師 吉田行男氏が対談した。(文中敬称略)


ビットアイル・エクイニクス 成迫剛志氏(左)と日立ソリューションズ 吉田行男氏の対談

成迫:2015年10月に国内で初開催された「OpenStack Summit 2015 Tokyo」を機に、OpenStackは、これまでクラウド事業者のような一部の業種の人たちが興味を持っていたというレベルから、一般の人たちにも、「OpenStackというものがあって、どうやらIaaSが作れるらしい」という認知が広がったのではないかと思います。

吉田:その東京サミットで、キリンホールディングスがOpenStackでプライベートクラウドを構築した事例が紹介されました。こういったネット系先端IT企業以外のエンタープライズでのOpenStack活用事例をどうやって増やしていくのかが2016年の大きな課題です。

 とはいえ、これまで一般エンタープライズでOpenStackが全く使われていなかったわけではなく、試験環境に導入して検証しているケースは少なくありません。2016年は、これを本番環境に移行するフェーズだと思います。OpenStackのどのバージョンを使うか、どの機能を使うかといった検討がこれから始まります。一番機能が載っている最新版のLibertyを選べばいいかというと、そう単純ではありません。

OpenStackを車に例えると・・・

成迫:オープンソースの使いやすさにはレベルがありますが、今のOpenStackは、自動車に例えると、メカに強い人がチューニングして乗るようなスポーツカーですよね。自分でパーツを交換したり、エンストしたら自分でプラグを調整して対処できるような人向けの。だから、ヤフーやサイバーエージェントのようなネット系先端企業が今のメインユーザーです。

吉田:しかも、コンポーネントによって安定して使えるものもあれば、そうではないものもある。これを見極めるのが難しい。普通免許を持っているだけでは乗ることが難しい類の車です。


成迫:でも、OpenStackの本来の良さは、チューニングカーと市販車のどちらにも成り得るところでしょう? 各コンポーネントが疎結合になっているので一部の機能を用途に合った形にチューニングして使うこともできるし、機能群をうまくパッケージングすれば導入や運用のハードルが低くなり、一般エンタープライズでも使えるようになります。例えば、シスコが買収したMetacloudなどは市販車と呼べるかもしれません。

吉田:IBMが買収したBlue Boxも市販車ですね。

日本企業はOSSコミュニティの価値に気付いているか

吉田:Blue Boxと言えば、10月の東京サミットで来日したBlue Boxの開発者が「IBMに買収してもらってからのほうがビジネスのスピードが速くなった」と言っていました。ベンチャーのままの方が開発や意思決定が速いのが一般的だと思いますが、今のIBMのクラウド開発のスピードはベンチャーよりも速いみたいです。

成迫:SoftLayerも、IBMになってからの方がうまくいっているように見えます。昔のIBMは、自社で作ったものしか信用していないようでしたが、それではもうクラウド市場で競合と戦うことができない。SoftLayerやBlue Boxなどのクラウド企業を買収して、さらにそこにオープンソースコミュニティの力を取り入れてサービス開発を加速しているわけです。ここは、日本のITベンダーも見習うべきだと思いますね。全部自社で作っている場合ではないと。

吉田:そういう意味でOpenStackは、これからオープンイノベーションを学ぼうという企業や人にとって格好の勉強の場です。300社以上の会社が一緒になって同じものを作っていると「各社がどこで勝負をするのか?」「ベンダーどうしが競争できないのではないか?」と不思議になるでしょうが、実はハードウェアベンダーは自社製品でOpenStackを動かすためにドライバやその周辺技術を開発しているとか、特定の機能のサービス化してビジネスにすることを見越して開発しているのではないかとか、そういったことを学ぶ教材に見えます。

 LinuxカーネルやPostgreSQLのように、特定の機能を提供するオープンソースは、その機能で商売をする限られたベンダーが開発を頑張っているように見えて分かりやすかった。その点、OpenStackの開発コミュニティは横に広がっているのが面白いのです。ネットワークからストレージから幅広い分野のプレーヤーが参加しないと作りきれない。

成迫:このコミュニティがオープンソースのメリットですよね。ベンダーにとってもユーザーにとっても。欧州の企業などはコミュニティを最大限に利用してメリットを得ていますが、それに比べて、日本はオープンソースコミュニティの力を十分に享受できていないように思えます。特に、エンドユーザーがコミュニティの価値を理解してメリットを享受できるようになれば、エンタープライズでの活用が進むのでしょう。


吉田:OpenStackのユーザーどうしが、運用上の問題なんかを共有して、同じような経験をした人がアドバイスをする。ノウハウを共有することで次にもっとよいことがあるということをもっとメリットに感じてくれればいいのですが。

成迫:商用ソフトなら、ユーザーの声をベンダーが吸い上げてノウハウを水平展開しますよね。さらに売れ筋のソフトだと、ユーザー会が作られてユーザーどうしで情報共有をする場ができます。だから、オープンソースだと、ベンダーがいない状態でユーザーコミュニティが作れるかどうかが普及のカギになるかもしれない。それも、自分で車がいじれる層のユーザーコミュニティとは別に、市販車に乗る層の一般エンタープライズのユーザーコミュニティがあったほうがいい。

吉田:似たようなコミュニティがPostgreSQLにはありますよ。PostgreSQLエンタープライズコンソーシアム(PGECons)というグループが、エンタープライズ用途限定で、可用性や性能についての検証や情報共有をしています。

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