OpenStackエコシステムの牽引役を担うのは誰だ

エッジでの分散処理でボトルネック解消--日本発OpenStack NW仮想化ソフト 「MidoNet」

羽野三千世 (編集部) 2016年02月26日 07時00分

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 本特集では「OpenStackエコシステムを牽引するのは誰だ」と題してOpenStackキープレーヤー各社のプロダクトと、事業戦略上のOpenStackの位置づけを解説し、OpenStackの一般エンタープライズへの普及に向けた道筋を探っていく(第1回第2回第3回)。今回第4回目は、OpenStack向けネットワーク仮想化ソフトウェア「MidoNet」を開発するMidokuraを取り上げたい。

グロービス創業者とクラウドアーキテクトが共同で創業

 Midokuraは、ビジネススクール「グロービス」の創業者である加藤隆哉氏と、Amazon.comでEコマース基盤のアーキテクトだったDan Mihai Dumitriu氏が、2010年に東京で共同設立した企業だ。OpenStack開発コミュニティに早期から関わっており、OpenStackの2011年2月リリース版である「Bexer」からコントリビューションしている。

 現在はネットワーク仮想化ソフト専業だが、創業当初はAmazon Web Services(AWS)の日本版を作ることを目指しており、社名のミドクラは“みどりのクラウド”という日本語に由来するという。本社はスイス、開発拠点は東京、スペイン・バルセロナ、イスラエル、ドイツに置いている。経理や法務などのコーポレート部門は東京にあるそうだ。

 ネットワークベンダー出身ではなく、クラウドアーキテクトのバックグラウンドを持つファウンダーがいるMidokuraだが、同社が開発するネットワーク仮想化ソフトにはその特徴が表れている。

Neutronを拡張するMidoNet


ミドクラジャパン 松尾茜氏

 Midokuraが開発するMidoNetは、スイッチ、ルータ、NAT、ファイアウォール、ロードバランサといったL2~L4の仮想ネットワーク機能を提供するソフトである。OpenStackの仮想ネットワーク管理コンポーネント「Neutron」のOpen vSwitch(OVS)プラグインを置換し、Netronの機能を拡張する。

 「NeutronのOVSはそのまま使うには複雑で、耐障害性と拡張性に課題があります」と説明するのは、ミドクラジャパン 松尾茜氏だ。MidoNetと同様のネットワーク機能セットを提供するNeutronのプラグインには、標準プラグインのOVSのほか、VMwareの「NSX」やJuniper Networksの「Contrail」などがあるが、「これらの競合プラグインは、L3の通信において、仮想マシン(VM)から出てくるパケットをネットワークコントローラノードで処理する必要があります」(松尾氏)。このネットワークコントローラノードが単一のブレーンになる設計は、多数のVMを扱う大規模システムにおいて処理性能、拡張性、耐障害性のボトルネックになる。

 それに対してMidoNetでは、VMが立ち上がっている各コンピュートノードにMidoNetエージェントを入れて、エッジ側で分散処理を行うのが特徴だ。

EC基盤由来の分散処理技術を搭載

 MidoNetの仕組みを、下の図を使って説明する。下側が物理環境、上側がMidoNetがシミュレーションする仮想ネットワーク構成図だ。MidoNetではVMが稼働する全物理サーバにMidoNetエージェントを置き、そのエージェントが仮想ネットワークをシミュレーションして作成する。


「MidoNet」の概要

 あるVMからパケットが出てくると、そのVMと同じ物理サーバ上にあるMidoNetエージェントが計算を行い、パケットがどこに行くのかをシミュレーションする。

 「例えば、VMから外のインターネットに出ていこうとするパケットがあったら、ファイアウォールがかかっているか、NATによるIPアドレスの変換をする必要があるかなどL2~L3ネットワーク機能に関するすべてのシミュレーションをサーバの中で先に実施してしまう。その上で、最終的にパケットを飛ばす先を決定し、トンネリングによりワンホップで飛ばす処理をします」(松尾氏)。インターネットに出ていくパケットであればVMからゲートウェイへ、クラウド内でのVM間の通信であればパケットを行き先のVMが稼働するサーバへ送りそこで処理をする。

 ネットワークコントロールノードを置かず、コンピュートノードで分散処理をする仕組みにより、VMをスケールアウトする際にコントロールノードがボトルネックになる問題や、コントロールノードが単一障害点になる問題が解消する。この分散処理の仕組みは、Amazon.comのECサイトの基盤に使われている技術であり、クラウドアークテクト出身のファウンダーがいる同社ならではの特徴だ。

コンテナネットワークへの応用に期待

 同社は2014年に、MidoNetをオープンソース化し、現在は無償のコミュニティ版と、マネージド機能などを追加した商用版「Midokura Enterprise MidoNet(MEM)」の2つを提供している。

 「現在、MEMの販売先は、すでにOpenStackを使っている企業のうち、ネットワークに課題を感じているユーザーです。特に、企業システムではサーバは仮想化してもストレージは物理マシンに格納したままにしたいケースが多いので、ここの通信をつなぐために、MEMのVTEP(トンネル終端ポイント)ゲートウェイの機能に注目して導入を検討するユーザーが増える傾向にあります」(松尾氏)

 さらに、「OpenStackだけではなく、コンテナのネットワークにもMidoNetを使いたいという問い合わせが増えています」と松尾氏。将来的にこのニーズに応えることができるよう、OpenStackのコンテナネットワークプロジェクト「Kuryr」へのコントリビュートに加えて、「Kubernetes」や「Mesos」などのコンテナ関連のOSSプロジェクトの開発にも関わり、MidoNetとの連携を強化する方向での開発に貢献している。

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