AIやIoTでのデータ活用のために--オープンデータによる官民連携 - (page 3)

小船井健一郎 山田竜司 (編集部)

2016-11-09 07:00

シビックテックの可能性と課題とは

――日本でのオープンデータを使った取り組みや、サービスについて教えてください。

 オープンデータによって活性化したといえる具体的な成果の一つが、ITエンジニアが社会課題に取り組む「シビックテック」です。今も全国各地でオープンデータの活用コンテストやハッカソン・アイデアソンといったイベントが盛り上がっています。これは特筆すべきことで、日本で30~40カ所も「Cord for ~」という地域名を掲げた、自発的なエンジニア集団が出てきているのです。彼らは行政と話をしてオープンデータやいろいろなテクノロジを使った社会活動をしている。

 オープンデータを利用した製品やサービスとして、ゴミ収集管理アプリの「5374」や介護事業所の空き状況を管理する「ミルモ」、不動産の予測成約価格を扱う「GEEO」などが出てきています。

 あるいは位置情報でAEDを必要としている人が近くにいると伝えるAED SOSは、それだけみると米国でもあるサービスですが、保険会社とタイアップしたりクラウドファウンディングで資金を募ったり、いろいろなビジネスモデルを組み合わせています。このサービスはハッカソンから生まれ、投資家から投資も受けるほどに成長しています。こうした面白い企業が出てきています。

 このようにプロジェクトや企業はたくさんできているのですが、大きいものはまだまだです。その理由は、みんなが喜ぶような大きなデータが出ていないことが大きいでしょう。道路も気象も感染症のデータも法人登記情報も、政府の外郭団体や業界団体などが有料で出す仕組みを早い時期から日本では作ってきました。そこをどう新しいオープンデータ的なエコシステムへソフトランディングさせていくか。そういう意味では、本当に価値のあるものを出すには時間がかかるでしょう。

 また、全国を対象とする企業が出てくるための支援が不十分なのも課題です。「~市のデータを使った良いアプリができたので他の市でもやってみよう」という、“点”を増やしていくことはやってきました。しかし「日本全国や世界各国で使えるサービスにしていこう」という育て方をしていない。

 個々の自治体は経済政策としてできることは少ない印象で、社会課題の解決を志向する傾向が強い。でも、本当はそのなかから「同じ社会課題があるなら世界中で使おう」と考えて実行するような人や企業が出てくるようにしないといけません。

 何が正解であるか分かりにくい時代ですから、これからは、今以上にたくさんの人が挑戦しないと確率的に良いものが出てこない。もちろんアプリコンテストをやる自治体がたくさん出てきていますし、挑戦する人も増えてきています。そうしたチャレンジをする人を、育てて、少しずつビジネスにしていく環境をつくる。そして、彼らが必要とするプラットフォームを提供する。いろいろなことを官民協働でやっていくためには、そうした取り組みをしていかなければなりません。

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