情報は現代組織の血液であると言われている。企業によるデータ公開の試みは、そのデータをさまざまな視点を持つ人の目に触れさせることで、大きなメリットを得ようとする試みだ。
McKinseyの調査では、オープンデータを推進することで、7つの部門だけで年間3兆ドルの価値を生み出すことができるとされている。オープンデータとは、これまでは非公開だった組織内のデータを(多くの場合公共部門のデータから)外部からアクセスできるようオープン化したものだ。
多くの人にとっての問題は、外部の人に内部情報へのアクセスを提供することを自社でも検討すべきなのか、ということだろう。米ZDNetでは3人の専門家に話を聞いた。
視点が多いほどよい結果が得られる
Tullow Oilの前最高情報責任者(CIO)Andrew Marks氏は、民間部門の文脈でデータ公開について議論する場合、情報セキュリティの課題が重要な問題になると述べている。
「これは、プライバシーの問題を意識し始めている人々にとっては、重要な議論だ。情報をリスクに晒すことは、顧客データの保護と競争上の優位の両方の観点から、多くの場合、経営陣にとってもリスクが大きすぎる」と同氏は言う。
しかし、もしCIOが経営層の懸念を和らげ、新たなチャンスを作った場合、何が起こるのだろうか。Marks氏は、採掘の専門家が自社の地理データを社外の専門家と共有して、採掘に適した地点を選定してくれた人に賞金を出す試みである、Goldcorp Challengeの例を挙げた。
この賞金総額57万5000ドルのコンテストでは、110カ所の採掘可能地点が発見されたが、そのうち50%は、同社が把握していない場所だった。このコンテストを通じて発見された金の価値は、60億ドルを超える。Marks氏は、ほかの企業にも同様の勇気ある一歩を踏み出せる可能性があるかもしれないと考えている。
「情報には秘密性を必要とする時期がある」と同氏は言う。「しかしデータの価値が限定的になり始めたら、企業がそのデータを公開し、外部の人間が利用できるようにすることで、利益を得られる可能性がある。このアプローチは、ゲーミフィケーションの観点から、新たなアイデアやイノベーションを生み出すことに繋がるかもしれない」
たとえばロンドン交通局は、無料でオープンデータを提供する取り組みを進めている。この取り組みは、アプリ開発者が交通に関連するさまざまなアプリを生み出すことにつながり、顧客が地下鉄や自転車、バスなどに関する情報を追跡するのに役立っている。
Marks氏によれば、これらのプロジェクトの事例は、データに対する視点の数が多いほど、多様な結果が生まれる(良い結果が出る可能性もある)ということを示している。「ビッグデータのアルゴリズムを使用するにせよ、人間が関与するにせよ、データに対する視点が多いほど、成功の可能性は増し、リスクは減少する」と同氏は言う。
「このため、別の視点を求めることは価値が得ることに繋がる可能性が高い。データへのアクセスを公開するということは、企業がより多くのアイデアを得られるということを意味する。CIOやその他の役員は、そのオープンさが事業にとって何を意味するか、どのような潜在的なメリットがあるかを十分に考える必要がある」(Marks氏)